コロナ危機は人々の生活に大きな影響をもたらした。終息後、私たちの人間関係や家族、教育はどのように変化するだろうか。行動経済学に詳しいマーケティングライターの牛窪恵さんと脳科学者の中野信子さんによる緊急対談最終回。

リソースが少なくても生きていける力

【牛窪】先日、弊社が行ったマーケティング調査(定量調査)では、「年収ベースが低いエリアほど、ヨコの連帯が強い」という傾向が見てとれました。例えば、実家の近くに住んでいて親としょっちゅう行き来する。あるいは、昔から住む地元に家を買い、困ったことがあると「ジモ友」同士で助け合う。マーケティングアナリストの原田曜平さんが提唱した「マイルドヤンキー」とも重なります。今回、トイレットペーパーやマスクが手に入りにくくなっても、「うちの分、あげようか?」と融通し合う様子が見られました。

脳科学者の中野信子さん(右)とマーケティングライターの牛窪恵さん(左)。
脳科学者の中野信子さん(右)とマーケティングライターの牛窪恵さん(左)。

【中野】自分が利用できるリソースと、周りの人とのつながりの強さには、密接な関係がありますよね。「つながりが強い人ほど、自分の持つリソースが少なくても生きていける」は、いわばなぜ人間が集団を形成するかという疑問に答え得る根本原理ですから、当然のことですよね。自分に不足したリソースを、集団内の他の誰かに依存できる、というのがコミュニケーション力ということでしょう。「つながり」というのは人類が生き延びてくるために必要だった資産なんでしょう。