新型コロナの対応では、政府や自治体のリーダーシップに賛否両論集まっている。限られた情報をもとに、刻々と変化する状況を見極めて意思決定をする必要がある中で、求められるリーダーシップはどういうものなのだろうか。脳科学者の中野信子さんと、行動経済学に詳しいマーケティングライターの牛窪恵さんの緊急対談第4弾。

他国に比べれば、日本のコロナ対応は及第点

【牛窪】新型コロナの対応では、首相はもちろん、各自治体首長のリーダーシップにも注目が集まっています。私はいちおう「経営管理学(MBA)」修士なので、大学院の授業でも経営者のリーダーシップ論を数多く学びました。今回感じたことはいくつかあるのですが、政府の対応について、中野先生はどのようにご覧になりますか?

脳科学者の中野信子さん
脳科学者の中野信子さん

【中野】他国と比較すれば、日本は「健闘している」という評価になるでしょうね。

3月中旬の状況で言えば、検査には検出力に限界がある、ワクチンや特効薬もまだ開発されていない、人工呼吸器があり重篤な患者さんを収容できる病床数も限られている、という中では、幅広く検査をして感染者を検出しようとするのではなく、「重篤になった患者をどれだけ早く救えるか」に焦点を当てるという方向に舵を切ったのは悪くない判断だったと思います。

ただ、初動でクルーズ船の問題が起こり、船内の動線設計を失敗したのは残念でした。日本政府の意思決定に混乱があったことを、世界に知らせる結果になってしまいましたから。

しかしながら、まだ堤防は決壊していません。ここで言う「堤防」は、重篤な患者さんを収容できる病床数。経済をある程度、犠牲にすることにはなってしまいますが、医療崩壊を招かないためにも、政府に任せきりにするのではなく、人と人との接触をできるだけ減らすソーシャルディスタンシング(社会距離拡大戦略)を各自が徹底していくしかないのではないかと思います。