卑弥呼は傾聴で戦乱を治めた

【牛窪】昔ながらのリーダーシップは「支配型」で、集団を統率するために“上から目線”で命令します。一時的に見れば、その方が浸透は早い。日本よりも先に新型コロナの感染が広がっていた中国では、こうした支配型で統制する傾向が強く、権力も個人情報もトップに集中しているので、素早く行動制限ができました。

一方、サーバントリーダーシップでポイントになるのは、部下や組織全体のコミュニケーション、そして傾聴力です。例えば失敗したときも、「ダメじゃないか」と叱責するのではなく、「なぜ失敗したと思う?」と傾聴して原因を探る。一定の時間はかかりますが、この能力は「女性リーダー」の強みとも言われ、長い目で見ればそのほうが下の人たちが育つとされています。

【中野】これは非常に興味深いですね。また古代史の話になっちゃうんですが(笑)、弥生時代の日本に、たくさんの王がいて争いを繰り広げた「倭国大乱」という戦乱の時期がありました。遺跡からは、おそらく戦の犠牲になった人々のものと思われる、不自然に割れたり穴が開いたりしている人骨がたくさん出ています。しかしそこで、卑弥呼が女王として立ち、戦乱がようやく治まったといいます。

必ずしもジェンダーで「支配型」「傾聴型」が決まるわけではないですが、卑弥呼は巫女でしたから、あたかも神の声のように民の声を聴いていたのかもしれないですね。みんなの言いたいことをよく汲んで政治をした……と考えれば、傾聴型のリーダーこそが乱世を治めたということになり、仮説としては面白いのかなと思います。

【牛窪】一方で今回は、時間的余裕がなかった。私たち国民も、自分たちの声を政策に取り入れてほしい半面、短時間でビシッと具体策を提示する強いリーダーを求めていた部分もある。その両面で理想的だったのは、ドイツのアンゲラ・メルケル首相ではないでしょうか。