「14番目の地下鉄」が臨海部にできる背景
現在、東京メトロと都営地下鉄の地下鉄13路線が走る東京都心。既存路線の延伸や支線の整備計画を除けば、これまでは2008年に開業した「副都心線」をもって新線建設を終了する予定だったが、今年に入って14番目の地下鉄を整備しようという動きが加速しつつある。
地下鉄計画が急浮上したのは、東京オリンピック・パラリンピックを来年に控え、各所で工事が進む臨海部だ。江東区、港区にまたがる臨海副都心は東京駅から半径6km、ちょうど新宿や渋谷と同じくらいの距離にあるが、都心と新宿・渋谷の間に何本もの路線が整備されているのに対し、臨海部は有楽町線が地域をかすめている程度。
2000年代初頭に都営地下鉄大江戸線や東京臨海高速鉄道りんかい線が整備されたが、都心に直結する路線がない鉄道空白地帯となっており、都心に極めて近い立地条件にも関わらず、広大な未利用地が残っていた。
ところが今や都心と臨海副都心を結ぶ直線上、特に中央区の臨海部では築地市場跡地に国際展示場等(MICE)を設置する計画や、オリンピック終了後に選手村を転用・開発する「HARUMI FLUG」の整備など、大規模開発案件が次々と浮上している。
今から地下鉄を造っても遅いのではと思うかもしれないが、国立社会保障・人口問題研究所は2018年3月、2015年から2040年にかけて中央区、千代田区、港区の人口が30%以上増加するとの地域別将来推計人口を公表している。今後数十年は増加が見込まれる一帯を、国際競争力のあるビジネス拠点として開発するために、都心と臨海部を結ぶ新たな軸が必要になるという考えだ。
臨海部に位置する中央区の勝どき、晴海、江東区の有明などはタワーマンションが乱立しているにもかかわらず、最寄り駅までの遠さや混雑が長らく課題となっている。新線が誕生すれば湾岸一帯の住民のアクセスは格段によくなり、周辺開発がさらに進むだろう。