ところが、オリンピック招致が決定し、晴海に選手村を整備し、大会後に住宅地に転換する計画が固まると、中央区は地下鉄整備を模索するようになる。そこで中央区は、地下鉄計画を2016年の答申に滑り込ませようと、急ぎ調査を実施したというわけだ。

気になる新線のルートは?

中央区が行った調査検討は、まず2014年度に臨海部地下鉄単体の需要予測と事業費、収支採算性を調べた。次に2015年度に臨海部地下鉄の延伸や、さらなる新線を追加して臨海部の交通ネットワークを拡充する可能性を検討するという2段階で行われた。

地下鉄は地上の用地買収を避けるために原則として道路下に建設される。どのルートを通るかで、路線の深さや駅の設置位置など、計画の全容は大きく変わってくる。都心から臨海部に向かう道路は「環状2号線」「晴海通り」「都道473号線」などがあるが、東京BRTと経路が重複する環状2号線や、日比谷線が通る晴海通り、有楽町線が通る都道473号線の地下を全面的に活用するのは困難なので、いくつかの道路下をつなぎ合わせてトンネルを建設することになる。

有力視されているのは、銀座のみゆき通りから出発し、そのまままっすぐ築地市場跡地を通過。豊洲に入ったところで環状2号線に合流して、りんかい線国際展示場駅まで向かうルートだ。約5kmのトンネルと、新銀座駅、新築地駅、勝どき・晴海駅、新市場駅、新国際展示場駅(いずれも仮称)5駅の新設で、総事業費は約2500億円と見込まれる。

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検討調査では、運賃体系は東京メトロや都営地下鉄とは別建てとなり、金額はりんかい線並み(調査当時は1~3km 206円、3~6km 267円)。運行本数はピーク時15本/時(4分間隔)、オフピーク時8本/時(7分30秒間隔)で、新銀座―新国際展示場間の所要時間を7分30秒で結ぶ想定で、1日あたりの利用者数は13.4万人を見込んでいる。

第3の地下鉄事業者が誕生するのか

最大の問題は、この路線を誰がどのように整備するかという点にある。地下鉄新線というと、東京メトロと都営地下鉄のどちらの路線になるのかが気になるところだが、事業費を調達するために新規に設立する第三セクターが建設と運行を担う想定だ。

あくまでも中央区の調査であり決定事項ではないが、仮に想定通りに整備されると、東京メトロ、都営地下鉄に次ぐ、第3の地下鉄事業者が誕生することになる。

ただ東京の地下鉄のうち、最も利用者数が多い路線は東西線で1日当たり約130万人、最も少ない南北線でも50万人を超えていることをふまえると、臨海部地下鉄の13.4万人という想定は、あまりに少ない印象を受ける。

実際この数字は、地下鉄では横浜市営地下鉄グリーンラインや京都市営地下鉄東西線と同程度で、同じ臨海部を走るりんかい線の半分程度ゆりかもめとほぼ同等であり、地下鉄としては物足りない数字である。