JR西日本は、関西圏の通勤路線で終電を30分程度早める検討を始めた。早ければ2021年春のダイヤ改正から実施されるが、都市部では異例の取り組みだ。同社のねらいはどこにあるのか。鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏が解説する——。
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記者会見するJR西日本の来島達夫社長(右)と長谷川一明副社長=2019年10月28日、大阪市北区

各社の終電が延びるなか、都市部で異例の前倒し

大手コンビニチェーンで深夜営業の見直しが進む中、鉄道にも「働き方改革」の波が押し寄せるかもしれない。旗振り役は2014年に計画運休を導入して、災害時の人々の動き方を変えた実績のあるJR西日本だ。同社は10月24日、夜間に線路などの点検作業の時間を確保するために、関西圏の通勤路線で最終電車の時間を30分程度早めたい意向を示した。1年間かけて検討を進め、早ければ2021年春のダイヤ改正で実施するという。

しかしこれまで、鉄道業界ではサービス向上のため終電を繰り下げてきた。例えば大阪市営地下鉄(当時)は2013年のダイヤ改正で、各路線の終電を最大30分繰り下げた。東京メトロも2013年から2015年にかけて、丸ノ内線や東西線などで終電を延長した

私鉄でも近畿日本鉄道が2018年、各路線で終電を10~20分繰り下げるダイヤ改正を実施。東武鉄道も2020年3月14日のダイヤ改正で、東武野田線(アーバンパークライン)の最終電車を、大宮、柏、船橋などの乗換駅で最大33分繰り下げる。深夜時間帯の利便性を向上することで、沿線住宅地の開発に弾みをつけたい考えだ。

その他、期間限定の措置ではあるが、東京都はオリンピック期間中、首都圏のJR・私鉄・地下鉄各線の終電を最大90分程度延長し、深夜時間帯の観客輸送を行う計画がある。

それだけに、利用者の減少が進むローカル線であればまだしも、都市部での終電繰り上げはめったに聞かない大ニュースである。今年の春先、品川駅に到着する山手線内回りの最終電車が27分も早まると話題になったことを覚えているだろうか。品川駅改良工事の都合で、品川行き最終電車が一つ手前の大崎止まりに変更されたのだが、1本の列車の運行距離が2km短縮されただけで大騒ぎになるのが最終電車の存在感というものだ。