JR西日本は、自社の線路保守作業員にとっての働き方改革だけでなく、深夜時間帯の働き方、過ごし方そのものを見直すために、社会に「終電繰り上げ」を問題提起したいという。つまり、鉄道とともに社会も変わるべきだと訴えるのである。

これには異論、反論もあるだろうが、2009年の終電繰り上げと、2014年の計画運休を定着させてきたJR西日本らしい取り組みとも言えるかもしれない。

「24時間おもてなし都市」を目指す大阪府が黙ってない

他方でもっと「夜遊び」すべきとの主張もある。18時から翌日朝6時までの時間帯に、夜ならではの消費活動や魅力を創出して経済効果を高めようという「ナイトタイムエコノミー」だ。もともとは深夜に限った話ではないのだが、やはり注目を集めているのは、これまで活用が進んでいなかった24時以降の時間帯だ。観光庁の資料によると、ナイトタイムエコノミーを積極的に推進しているニューヨークやロンドンでは、2兆~3兆円規模の市場を形成しているという。

2025年に大阪万博を控え、カジノを含むIR(統合型リゾート)誘致を目指す大阪府も、「安全で安心して楽しめる24時間おもてなし都市」の実現に向け、ナイトタイムエコノミーに熱視線を注いでいる。彼らがJR西日本を寝かせたままにしておくだろうか。

実際、終電繰り下げ・終夜運転はナイトタイムエコノミーの推進力として期待されている。24時間運行の地下鉄といえば、複々線の路線網を活用するニューヨーク地下鉄が有名だが、2016年からロンドンでも週末(金曜・土曜)限定で地下鉄とバスの24時間運行が始まった。パリでも実証実験が計画されている。この他、終夜運転まではしなくとも、週末の終電は1~2時間延長される地下鉄は多いという。是非は別としても今後、日本でもこうした議論が起こるのは間違いない。

もちろん単純に是か非かの議論ではなく、平日の終電は早めつつも、週末は遅くまで運行するという選択もあり得るし、終夜運転は必ずしも鉄道にこだわる必要はない。いずれにしても確かなのは、今後、終電延長や終夜運転の議論は、JR西日本の「問題提起」を無視しては行えないということだ。

はたしてJR西日本の提起は日本社会に受け入れられるのだろうか。国や自治体は、利用者は、どのような在り方を望むのか。JRの検討を見守るのではなく、賛成であれ、反対であれ、私たち自身が大いに声をあげ、盛り上げていきたい課題である。

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