需要想定が延びない最大の要因は、既存路線との直通運転を行わず、いったん銀座駅に出てから乗り換えなければならない使い勝手の悪さにある。調査報告書は、適切な資金調達スキームを構築することで採算は確保できるとしているが、交通政策審議会の答申では「事業性に課題がある」との指摘があり、整備効果を高めるための対策が不可欠とされている。
相互直通運転の本命はつくばエクスプレス
もちろんこの課題は中央区も理解している。2015年度の調査では臨海部地下鉄を新銀座または新国際展示場からさらに延長し、東急田園都市線、西武新宿線、東急池上線などとの相互直通運転を想定した検討がされているが、最も効果的とされているのが、つくばエクスプレスとの直通運転案だ。
2005年に秋葉原ーつくば間で開業したつくばエクスプレスは当初、東京駅を起点とする計画だったが、事業費を削減するために秋葉原―東京間の建設を先送りした経緯がある。同線の利用者は開業時の想定を大幅に上回り、営業利益も毎年過去最高を更新。来年開業15年周年を迎えるということで、沿線自治体から東京延伸実現の期待が寄せられている。
そこで臨海部地下鉄の整備区間を新銀座から東京まで延長し、つくばエクスプレスの秋葉原―東京間と一体的に整備することで、両線で相互直通運転を行おうというのである。
事業費は1100億円の増額になるが、利用者数は新銀座―新国際展示場間のみの整備と比較して3倍近い1日あたり36.5万人まで増加する見込みだといい、交通政策審議会の答申もこの構想を支持している。
資金調達方法など、課題は山ほどある
事業採算性とともに鉄道事業の成立を左右するのが、資金調達スキームだ。ここでも臨海部地下鉄が頼るべきは、つくばエクスプレスという先行事例である。
同線を運行する首都圏新都市鉄道は、建設費9400億円のうち、14%を関係自治体と民間からの出資金、40%を沿線自治体からの無利子借入金として調達。建設を担当した鉄道・運輸機構が都市鉄道整備事業資金から無利子で40%、国の財政投融資から有利子で6%を借り入れて路線を整備したのである。
つくばエクスプレス成功の最大の要因は、調達した資金のほとんどが返済不要または無利子の借り入れだったことと言っても過言ではない。
臨海部地下鉄の場合は、建設費のおよそ半分に対し国と東京都の補助金(地下鉄補助)が交付されるが、その他の部分で適切な資金調達スキームを構築して、過度の金利負担を避けることができれば、20~30万人の利用者であっても経営上、大きな問題が生じることはないだろう。
読売新聞が報じた通り、来年度予算案に臨海部地下鉄の調査費が計上されれば、地下鉄をどこからどこまで整備するかと、誰がどの程度資金を負担するかという点を中心に検討が進むと思われる。
ただ、いずれにしても開業は2030年代後半になる見込みだ。その間に、つくばエクスプレスに東京延伸や相互直通運転の余裕があるのか、また同社の経営に負担を与えない事業スキームを構築できるのか、臨海部の開発は想定通りに進むのかなど、解決しなければならない課題は山積している。
果たして14番目の地下鉄は本当に実現するのか。来年度の小さくとも大きな第一歩に注目したい。