逢沢一郎選管委員長は11日、高市氏に「苦情が多数寄せられた」と口頭で注意したが、高市氏は「総裁選に一言も触れていない。規則には全く抵触していない」と反論した。高市氏が党員票を大幅に伸ばしただけに、後味の悪さは否めない。

9月27日の投票日が迫る中、日本テレビに続き、読売新聞が25日、「石破・高市・小泉氏競る」という見出しで終盤情勢を報じた。内訳は石破氏126票、高市氏125票、小泉氏114票だったが、未定も103票に上った。来年夏の参院選で改選を迎える50人超の参院議員が態度を決めておらず、その動向も注目された。

各候補者・陣営は決選投票に向け、「石破vs.高市」「石破vs.小泉」「高市vs.小泉」の3パターンごとに陣営同士の連携をめぐる駆け引き、議員票を動かす力がある実力者や新キングメーカーを頼っての集票戦略を練る必要に駆られる。

自民党本部(写真=Lombroso/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

「岸田政権の取り組みを引き継ぐ」

石破氏は25日に国会で記者会見し、経済政策について賃上げと投資の促進を柱とするとし、「岸田政権の取り組んできたことを引き継ぐ」と強調した。これに呼応した旧岸田派の松山政司参院幹事長が、決選投票では石破氏に投票するよう派内に呼びかけている。

石破氏は26日には菅氏に続いて、犬猿の仲とされる麻生氏とも面会し、支援を求めた。

高市氏は他陣営の議員に電話し、衆院早期解散の意向を示しつつ、第1回投票からの支持を求めたほか、選対本部長の中曽根弘文元外相(旧二階派)が25日に麻生氏、26日に二階俊博元幹事長と面会し、協力を求めた。

小泉氏は24日に麻生氏と会談したほか、自民党を離党しながら旧参院安倍派に影響力を残す世耕弘成前参院幹事長を訪ねて支援を求めた。小泉氏は26日には二階氏と面会、首相官邸に岸田首相を訪ね、協力を要請している。

「また麻生、茂木、岸田の三頭政治で」

「派閥なき総裁選」と言われたが、決選投票では旧派閥・グループの力学が働く。永田町の「貸し借り」の総決算の場で「貸し方」にいる麻生、菅、岸田3氏はどう動き、新政権の成り立ちにどう影響を与えたのか。

麻生氏のスタンスは、菅氏と一定の距離を置き、その菅氏をバックにする小泉氏には興味が湧かない。石破氏とは麻生内閣で退陣を迫られただけでなく、女系天皇容認論をめぐる誤解もあって反りが合わない。武田氏とは福岡政界で敵対関係にある。

投票日前夜の26日夜、先に仕掛けたのは麻生氏だった。麻生派から河野デジタル相を擁立したにもかかわらず、「第1回投票から高市氏に入れてもらいたい」と派内の大半に指令を出したのだ。河野氏の推薦人らには陣営選対本部長の森英介元法相から「麻生氏は決選投票で高市氏に入れると承知している」との連絡があったという。