コストアップする環境印刷を「付加価値」に
大川印刷をはじめ現在では多くの印刷会社が取り組む「環境印刷(=環境に配慮した印刷)」とは、
・印刷時に使用する湿し水については、有害な物質であるイソプロピルアルコールを添加しない湿し水を採用
・FSC®森林認証紙(森林破壊を抑制し持続可能な森林資源を次世代に残すことに貢献できるよう適切に管理された森林の木材を使っている紙)の使用
・石油系溶剤を植物油に置き換えた、ノンVOCインキを自社では99%使用
・配送時には環境負荷の少ないEV車やディーゼル車を使用
……などが挙げられます。
このような方法だとコストアップは避けられないのですが、大川印刷はそれを付加価値として示した先駆け企業なのです。
2019年頃から私はセミナーなどでさかんにこの大川印刷の例を取り上げるようになりました。すると、別の印刷会社から、
「ウチでも環境印刷に取り組んでいるのに、どうして大川印刷さんだけを取り上げるのですか?」
「わが社では環境印刷の方法をとる場合でも、従来の印刷方法と同じ価格に抑えているのに……」
といった声も聞かれました。
ただ、「環境印刷と言えば大川印刷」と代名詞のように名前が挙げるのにはワケがあります。先駆けであるとともに、共感・賛同をもって取引先に受け入れられる仕組みをつくっているからです。
「見せ方」の巧みさと「見える化」のうまさ
大川印刷は従業員数40名ほどで、印刷所としても小規模な企業です。そのため、ほとんど知られていませんでした。
しかし、「環境印刷」の取り組みを日本国内でいち早く手掛けるようになって以降、あっという間に表舞台に躍り出たのです。
大川印刷の取引先を見ると、国の機関やWWFジャパンなどの環境保全団体、さらにユニセフなど国連関連の団体、外資系の企業や海外の環境保全団体など、国内外の錚々たる有名企業・著名団体が名を連ねています。
日本より環境対策への意識が高く、基準も厳しいヨーロッパの企業や団体では、環境印刷のノウハウが定着している印刷所以外には発注しない方針を貫いているところも多く、ましてSDGsの旗振り役を担っている国連や環境保全団体ともなれば、環境印刷は必須です。
それゆえ、成功要因のひとつには、思い切って従来の印刷法を捨て、環境印刷のみに絞ったことが挙げられるでしょう。
しかし日本国内で、まだ環境印刷の認知度も浸透度も低かった時代から国内取引企業を着々と増やしていくことができたのは、先に挙げたホームページの例に見るように、「見せ方」の巧みさ、「見える化」のうまさが大きく貢献していると考えられます。