身近なところにある「付加価値」「タイパ・コスパ」

タイパとは「タイム・パフォーマンス」の略で、かけた時間に対する効果(満足度)のこと。もともとはZ世代と呼ばれる若者層を中心に広がった言葉です。

物心ついたときからデジタルコンテンツに触れ、膨大な情報を処理したり急激なトレンド変化に対応したりするのが日常的なこの世代は、「タイパ」重視の傾向にあります。映画やドラマのビデオを倍速で視るのもその表れです。

もっともその概念自体は新しいものではなく、Z世代より上の年代では、「時短」とか「時間効率」といった言葉を使っていました。いわゆる「時短商品」もめずらしいものではありません。

しかし、この「時短商品」「タイパ商品」もいまでは、これまでは注目されなかった価値を生み出すようになっています。

新たな商品企画・開発も必要ない

主婦が主な購買層となる食品業界では、「カンタン」「時短」は、いつの時代も歓迎されます。これまでもさまざまな時短商品や時短メニューが企画・開発され、売り出されてきました。

代表格のひとつが、レトルト食品です。

そのレトルト食品で、タイパトレンドに乗って、タイパ性能をさらに高め、プラスアルファの「価値」をアピールして売り込む仕掛けを打ち出している企業があります。

大塚食品やハウス食品は、50年以上も前からレトルトカレーの大ヒット商品を生み出している企業です。

カレーライス
写真=iStock.com/Wako Megumi
※写真はイメージです

この2社は、電子レンジ可のレトルト食品は沸騰したお湯につけて温めるよりも、電子レンジで温めるほうが大幅に時間を短縮できる点に注目。さらに、時間短縮だけでなく、二酸化炭素排出量を80%も削減できることを、ホームページ上でわかりやすくグラフで表示しています。

加えて、電子レンジで温める場合は、水を使わず、鍋を洗う必要もないので、水の節約にもなるとも伝えています。

このように既存商品にあらためて価値をつける手法は、新たな商品企画・開発も必要なく、それ自体が「コスパ・タイパ」と言えるでしょう。