都市の将来性を見極めるヒントはあるのか。金融アナリストの高橋克英さんは「海外の富裕層や投資家は、ルイ・ヴィトンの店舗がどの都市のどの立地にあるのかを、日本での不動産投資や事業投資における判断材料にしていることがある。ルイ・ヴィトンの店舗の有無が、勝ち組都市と負け組都市を見分けるヒントになるかもしれない」という――。
移転した「ルイ・ヴィトン」銀座並木通り店(=東京都中央区、2018年1月18日)
写真=時事通信フォト
移転した「ルイ・ヴィトン」銀座並木通り店(=東京都中央区、2018年1月18日)

ルイ・ヴィトンが茨城県から消える

2024年9月、フランスの高級ラグジュアリーブランドのルイ・ヴィトンが、茨城県水戸市の水戸京成百貨店にある県内唯一の店舗「ルイ・ヴィトン 水戸京成店」を2024年12月25日に閉店すると発表した。関東では元々店舗がなかった群馬県とともに、茨城県でもルイ・ヴィトンの店舗がなくなる事態にSNS上では「突然の閉店はショック」「水戸がますます寂れる」といった声があふれた。

実は近年、地方都市にあるルイ・ヴィトン店舗が相次いで閉店している。

2015年2月に「ルイ・ヴィトン 高知店」(高知県高知市)と「ルイ・ヴィトン 熊本鶴屋店」(熊本県熊本市)が閉店したのを皮切りに、2016年9月に「ルイ・ヴィトン 西武旭川店」(北海道旭川市)、2019年1月に「ルイ・ヴィトン トキハ大分店」(大分県大分市)、2021年8月には、「ルイ・ヴィトン 神戸阪急店」(兵庫県神戸市)が閉店した。

2023年8月には、「ルイ・ヴィトン うすい店」(福島県郡山市)、同年9月に「ルイ・ヴィトン 浜松遠鉄店」(静岡県浜松市)が閉店。今年に入ってからも7月には「ルイ・ヴィトン 柏店」(千葉県柏市)が閉店し、12月には「ルイ・ヴィトン 水戸京成店」が閉店予定というわけだ。

老舗百貨店内のテナント店の閉店が目立つ

これら閉店となったルイ・ヴィトンの店舗には、①地元の老舗百貨店内のテナント店だった、②地域内の他の都市との競争に押され気味なエリアにあった、という2つの特徴がある。

実際、上述した過去10年間で閉店した店舗のうち、高知を除く全てが地元の老舗百貨店のテナント店の撤退だ。

言うまでもなく、ルイ・ヴィトンは、ブランド力も集客力も絶大である。このため、ルイ・ヴィトン側の出店や取引条件が厳しく、大家である地元の老舗百貨店側には、採算が合わない場合もあったとみられる。しかしながら、地方都市の中心地に立地する老舗百貨店にとって、格上の存在であるルイ・ヴィトンの誘致は、ブランド力の象徴となり競合他社との差別化にもなるため「三顧の礼」で迎えてきた。だから、ルイ・ヴィトンの店舗が、百貨店の1階正面など最高のスペースに店を構えているケースが多いのだ。

こうした経緯があるなか、多くの場合、直接の閉店理由は、ルイ・ヴィトン側が賃貸契約の更新をしないと決めたことになる。しかし、当然ながら、その背景には当該地方都市の人口減少に伴う競争力や購買力低下による、相対的な売上の低迷も影響していよう。