お金が貯まる人、貯まらない人の違いはどこにあるのか。消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんは「送料無料、実質無料、初月無料、年会費無料など、世の中にはたくさんの『タダ』で溢れている。お金持ちになりたいなら無料に飛びつかないことが大切だ」という――。

無料は本当にお得なのか

「これは無料です」と聞いて、心が動かない人はめったにいない。1割引きよりも半額よりも、人を惹きつけるのが「無料」という二文字だ。なぜ、私たちは無料を好むのか。理由は「損をしないから」。損ほど嫌なものはない。

それを示す例が、「松竹梅の法則」だ。

3種類の商品がメニューにあった時、最も高い「松」、最も安い「梅」ではなく、真ん中の「竹」を選ぶ人が多いのはなぜか。松だと、高いお金を払うだけの価値があるかわからない。梅では安すぎてしょぼいかもしれない。金額的にも内容的にも真ん中の「竹」を選んでおけば、大きな失敗はなく、損しないのではないかと考えるからだ。

しかし、「無料」ならば、そんな心配は消える。お金を使わない以上、損するはずがないからだ。財布の中身はマイナスにならず、メリットだけがある。だから人々は無料が大好きというわけだ。

「無料で差し上げています」「送料は無料です」「実質無料です」――気づくと、「無料」は様々な形で私たちの周囲にあふれている。無料を選ぶことで、お金を使わずにメリットだけを受けられると私たちは考える。さて、本当に「損」はしないのだろうか?

手のひらのうえに、ゼロ円のブロック
写真=iStock.com/masamasa3
※写真はイメージです

無料にならない「実質無料」

最近よく耳にするこの無料。サービスに加入する際に、特典としてポイント還元とセットで提案されることが多い。

曰く、「今このサービスに加入すればポイント還元が○万円分付与されるので、ひと月分は実質タダです」とか、「このクレジットカードを作ると還元率が高いので、年に○万円使うなら年会費は実質無料です」など。

最初はお金を払ってもらうけど、あとからその分を補填できるので、トータルすると元は取れますよ、というわけだ。

このセールストークはかなり効くらしい。とあるクレジットカードのゴールドカードに関する調査で、保有するカードの種類を聞いたら「dカード GOLD」の割合が高かったとの結果を見た。

これは意外だった。ゴールドカードと言えば年会費もかかるし、もっと有名どころのブランドがありそうなのに、と感じたからだ。