カジノ候補地・江東区の状況は

2023年11月、旧知のカジノ反対派の2人に改めて連絡を取った。一人は「カジノいらない!東京連絡会」代表幹事の一人で弁護士の釜井英法さん。もう一人が、「市民と政治をつなぐ江東市民連合」事務局次長の芦澤礼子さんだ。2020年10月、臨海都民連の矢野政昭さんと青海地区を回った時、お二方に同行してもらっている。

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釜井さん・芦澤さん・矢野さんの3人は、2020年1月に発足した「カジノいらない!東京連絡会」のメンバーでもある。同会は「主婦連合会」「東京消費者団体連絡センター」のほか、芦澤さんの「江東市民連合」、矢野さんの「臨海都民連」など七団体で構成されている。

2月には「東京のカジノ建設予定地 江東区青海地区(北側)見学会」を開催。6月には小池知事に対し、2064筆のカジノ誘致反対署名と「IR誘致の是非に関する態度表明を求める申入書」を提出した。また、10月には、静岡大学教授(国際金融論)で『カジノ幻想』の著者である鳥畑与一氏を招いたオンライン学習会を開いている。

釜井さんは2020年10月の取材時、30年超にわたる弁護士活動の経験からカジノに反対する理由を語った。

コロナ禍を経て東京都の姿勢は後退?

多重債務や自己破産の相談者には、ギャンブルが原因となった人たちが少なくない。そのような人たちは、多重債務を整理する過程で多くの人が再度、ギャンブルに手を出してしまう。その結果、生活再建に支障が生じるだけでなく、家族との信頼関係にもひびが入ってしまう。「本来カジノは賭博罪に該当する犯罪です。人の不幸を生み出すカジノを賭博罪の例外とし、国策として受け入れるのはあり得ない」。力強くこう言い切った。

今回の取材では、東京都が2023年1月にまとめた「未来の東京戦略2023」で、IR誘致への言及がなかったことへの一定の評価を口にした。172ページ分の資料をめくると、「MICE誘致競争力強化」とは出てくる。

そこには「環境配慮型MICE」や「次世代型MICE」とあるものの、確かにIR誘致と絡めた文脈にはなっていない。2019年に官民連携チームが出した資料とは、印象がかなり異なる。この点について、釜井さんは「コロナ禍を経て都のIR誘致への前のめりの姿勢が、やや後退しているように感じる」とした。

しかし、もちろん東京カジノへの警戒を解いているわけではない。釜井さんが代表幹事の一人になっている「カジノいらない!東京連絡会」は前回、2020年7月の都知事選候補者にIR誘致に関する公開質問状を出した。2024年夏に実施される都知事選でも、「同じく実施を検討していきたい」と話したが、その言葉通りに実行した。