「IR推進派」が江東区議選で3人当選

大阪から始まった「日本維新の会」は、全国政党化に向けて勢力を伸ばしている。IR推進を掲げるこの党が、江東区でも着実に浸透中なのだ。2023年4月にあった同区議選では、59人が立候補し、定数44を争った。その結果、維新の区議が3人誕生した。しかも、2人は得票順で5位、6位と上位で当選。残る一人も、20位と余裕の通過だった。

「東京都がカジノへの立場をはっきりさせないから、確かに反対する私たちも動きにくい。しかし、都は諦めたわけではない。IR推進派の維新の影響力が江東区内や他の地域で高まっていることを考えると、皆の危機感を高めていきたい」

芦澤さんの熱量は、画面越しからでも、はっきりと感じられるほどだった。

一連の取材を続けていた2023年冬、興味深い話を聞いた。その情報をもたらしたのは、自民党政治家にパイプがあり、IR事業への参入を目指している実業家のAさん。新型コロナウイルスの流行以前から定期的に面会し、メディアには載らない霞が関・永田町界隈でのIR情報を教えてもらってきた。その流れで、この書籍の出版計画も初期の段階で打ち明けている。

東京ドーム跡地がカジノに?

肌寒さを感じるようになったある日、出版に向けた準備状況報告のため、都内事務所に伺った。すると、旧築地市場(中央区)の跡地再開発計画と絡めた、とある構想を持ち出した。

小池知事は2023年9月、募集していたこの計画に複数の事業者から提案書の提出があったことを定例記者会見で明らかにしている。この際の一部報道では、本命は三井不動産を主体とする企業グループで、そこには鹿島建設や大成建設などゼネコン数社のほか読売新聞グループ本社も参加するとされた(実際2024年4月に同企業グループに決定したことが発表され、約5万人を収容可能なスタジアムの建設構想が明らかになった)。

読売が加わるのは、プロ野球の巨人が東京ドーム(文京区)に替わる本拠地にするためと伝えるニュースも出た。確かに東京ドームは1988年の開業から35年以上が経過し、そう遠くないうちに、老朽化問題が浮上すると言われている。

ここまでは表に出てきている情報だが、Aさんによるとプラスの構想がある。それは、東京ドームや温浴施設「スパ ラクーア」などからなる「東京ドームシティ」一帯を再開発し、東京IRに造り変えるというものだ。同シティは都心のど真ん中に位置し、文京区は東京大学本郷キャンパスがあるなど日本屈指の文教地区として知られている。

青空の東京ドームシティ
写真=iStock.com/naotoshinkai
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