地元選出の秋元司氏が「IR賄賂」で逮捕され…

芦澤さんとはオンラインでの再会となった。彼女が事務局次長を務める「江東市民連合」は、2017年に改憲阻止と野党連合政権の成立に貢献しようと立ち上がった。連合がカジノの問題に関心を持ったのは2019年の終わり頃から。

同年12月に東京地検特捜部が衆院議員の秋元司氏を逮捕する。IR参入を目指していた中国企業側から370万円相当の賄賂を受け取ったとされる収賄容疑だ。現職国会議員の逮捕は約10年ぶりだった。

この「IR汚職」の渦中の人物となった秋元氏は、江東区の選出。江東市民連合は江東区役所前にある秋元氏の事務所前で抗議行動をしたり、同氏に公開質問状を提出したりと動いた。現場ルポでも説明したように、東京カジノの有力候補とされる青海地区は同区にある。江東市民連合のメンバー間で、「カジノ問題にきちんと取り組んでいこう」との意識が高まった。そうした流れもあり、「カジノいらない!東京連絡会」にも加わった。

「カジノで街おこしをしなくても十分に成り立つ」

2020年の取材時、芦澤さんは「江東区は財政的にも文化的にも豊かで、カジノで街おこしをしなくても十分に成り立つ」「カジノが来たらその周辺は荒廃する。私たちの江東区でそんなことを絶対に許してはならない」と語っていた。

その後、芦澤さんは2023年4月に開かれた江東区長選に共産、社民の推薦を受けて立候補している。当選には至らなかったが、「カジノ反対」の論陣を張った。

改めて連絡を取った同年11月、芦澤さんは多忙を極めていた。芦澤さんも出馬した選挙で当選して区長になった木村弥生氏が同月、突然に辞職したからだ。4月の区長選で、有料のインターネット広告をYouTubeに掲載した公職選挙法違反容疑で捜査を受けたことが原因だ。この件への関与が浮上した地元選出の自民党衆院議員、柿沢未途氏も法務副大臣を辞めることになるなど、余波も大きかった。

こうした状況下、芦澤さんは2020年の時よりもさらに強く、「東京カジノ」への危機感を示した。その背景には、拙著『カジノ列島ニッポン』(集英社新書)の第6章で詳述する「維新」の動きがある。