大幅利下げはハリス氏に追い風

4つ目「第3政党の主要な候補者なし」のカギは「真実」だ。無所属のロバート・ケネディ・ジュニア氏(ケネディ元大統領の甥)が8月23日、選挙戦からの撤退を表明したからだ。当初は、トランプ氏もバイデン大統領も嫌だという「ダブルヘイター」票がどの程度ケネディ氏に流れるかが注視されていたが、バイデン大統領の撤退でケネディ氏の支持率は凋落が加速し、1桁台前半にまで落ちていた。

その後、ケネディ氏は、選挙戦撤退とトランプ氏への支持を表明したわけだが、リクトマン教授によれば、「これまで聞いたことがないほど一貫性と説得力に欠ける支持表明演説」だったという。

5つ目のカギ「経済の短期的見通しが堅調」は「真実」だ。8月初め、米雇用統計の減速で景気後退懸念が高まり、株価が急落したが、このカギの定義は、11月5日の大統領選投開票日時点で「景気後退に陥っていないこと」という事実に尽きる。市場や有権者の景況感は関係ない。

アメリカが景気後退に陥っているかどうかは全米経済研究所(NBER)が判断し、宣言するが、そのプロセスに数カ月はかかる。よって、リクトマン教授は、アメリカが大統領選までに景気後退に陥る可能性は「ゼロ」だと指摘している。

また、これはリクトマン教授の分析ではないが、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月17~18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.5%という大幅な利下げを決定したこともハリス陣営への追い風になりそうだ。

ハリス副大統領は18日、FRBの発表について声明を出し、大統領になったあかつきには、「依然として高すぎる物価を下げることが最優先事項だ」としつつ、利下げは「アメリカ人にとって歓迎すべきニュース」だと述べている。9月19日には市場が利下げを好感し、株価が上昇した。

カマラ・ハリス上院議員、2017年5月12日(写真=United States Senate/PD US Congress/Wikimedia Commons

「経済の長期的見通しが堅調」「大規模な政策転換」も真実

6つ目のカギ「経済の長期的見通しが堅調」も「真実」だ。リクトマン教授いわく、驚くべきことに、バイデン政権における1人当たりの実質経済成長率は、過去2期の政権における平均成長率の2倍を上回るという。

7つ目の「大規模な政策転換」も「真実」だ。まず、「パリ協定」への復帰や、大胆な気候変動対策を盛り込んだ「インフレ抑制法」(IRA)など、バイデン政権の下で環境政策が一変した。また、移民政策から銃規制をめぐる法案まで、トランプ前政権とは政策が根本的に変わった。