与党の政権維持能力を測る「13のカギ」
まず、リクトマン教授は何を基準に勝者を予測するのか。世論調査? 選挙集会の規模? 資金調達額? いや、答えは、同氏が「ホワイトハウスへの13のカギ」と呼ぶ独自の予測システムだ。この13項目を基に政権与党の「統治」ぶりを分析し、与党が政権を維持できるかどうかを予測する。
「13のカギ」は時代が変わっても、「北極星(のごとく安定した道標)」だという。同システム構築の礎になっているデータは、リンカーン第16代大統領(共和党)が選ばれた1860年の大統領選にさかのぼる。当時はまだ女性が投票すらできず、自動車も飛行機もラジオもテレビもなく、農業が主要産業だった時代だ。
「『カギ』は、私たちの社会や経済、政治、人口構成の大きな変化を超えて生き延びてきた。それだけ耐久性があるということだ」
リクトマン教授は5日のライブで、上記のように語っている。13のカギを基に、政権与党による統治の「全体像」をつかむ――。これが教授の予測の極意だ。予測の発表は、さしものノストラダムスでも「緊張する」という。
リクトマン教授が「北極星」と呼ぶ「ホワイトハウスへの13のカギ」とは――。
×【カギ1】 政権与党に対する有権者の信任・支持:与党が現任期中の中間選挙で獲得した連邦下院の議席が、その前の中間選挙で獲得した下院議席数よりも増えた。
○【カギ2】 与党内の競合なし:党指名候補争いに打って出る主要な対抗馬がいない。
×【カギ3】 現職大統領の出馬:現大統領が再選に臨む。
○【カギ4】 第3政党の主要な候補者なし:共和党、民主党以外の主要な第3党か無党派の候補者がいない。
○【カギ5】 経済の短期的見通しが堅調:大統領選投開票日の時点で景気後退に陥っていない。
○【カギ6】 経済の長期的見通しが堅調:現政権における一人当たりの実質経済成長率が過去2期の(政権における)平均成長率と同等か、それ以上。
○【カギ7】 大規模な政策転換:前政権と比べ、現政権下で政策が大幅に変わった。
○【カギ8】 社会不安なし:大きな社会不安がない。
○【カギ9】 現政権にスキャンダルなし:大統領自身に大きな不祥事がない。
△【カギ10】 外交・軍事政策で大きな失敗なし:外交・軍事面で大きな失策がない。
△【カギ11】 外交・軍事政策で主要な成功あり:外交・軍事面で大きな成功を収めた。
×【カギ12】 政権与党の候補者にカリスマ性あり:再選に臨む現職大統領、または与党の大統領候補者がカリスマ性のある人物か国民的英雄だ。
○【カギ13】 対抗馬にカリスマ性なし:野党の大統領候補者が、カリスマ性のある人物でも国民的英雄でもない。
「真実でない」カギが6つ以上で政権交代が起こる
各カギが「真実」か「真実でない」かを判断し、「真実でない」カギが6つに達すれば、与党が負ける。「真実でない」という答えは与党に不利に働く。
リクトマン教授の分析では、今回、8つのカギが「真実」で、3つが「真実でない」、「外交・軍事政策」に関する2つのカギが「未定」だ。上記13のうち、冒頭が○になっているのが「真実」のカギ、×が「真実でない」カギ、△が「未定」のカギだ。「真実」のカギは【2】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【13】の8つ。「真実でない」カギは【1】【3】【12】の3つ。【10】【11】が未定のカギだ。
外交・軍事政策のカギ2つが未定なのは、ロシア・ウクライナ戦争とイスラエル・ガザ戦争が混沌としているためだ。戦争は「予測不可能で流動的」(リクトマン教授)だ。