「トランプは2度目の敗北を喫する」
とはいえ、万一、この双方のカギに「真実でない」という評価が下り、「真実でない」カギが計5つになったとしても、「ハリス副大統領の勝利」というリクトマン教授の予測は変わらない。「真実でない」カギが6つという、与党敗北の境界線には届かないからだ。
教授の見立てでは、最終的に、【カギ10】の「外交・軍事政策で大きな失敗なし」が「真実でない」に転じ、【カギ11】「外交・軍事政策で主要な成功あり」が「真実」になる可能性が高い。その場合は、9つのカギが「真実」で、4つのカギが「真実でない」という結果に落ち着く。
いずれにせよ、トランプ前大統領は2020年に続き敗北する、というのが教授の予測だ。では、13のカギを具体的に見ていこう。
オバマ氏の「後任争い」がトランプ勝利を引き寄せた
まず、1つ目は「政権与党に対する有権者の信任・支持」だ。民主党は2022年11月の中間選挙で、期待以上の成果を収めた。だが、大躍進した2018年中間選挙と比べると、22年には連邦下院の議席を減らした。よって、答えは「真実でない」。中間選挙は、政権与党がどの程度うまく国を統治しているかを示す「中間評価」だという考え方が、このカギの理論的根拠だ。
次が、大統領候補指名をめぐって「与党内の競合がない」という2つ目のカギだが、これは「真実」だ。7月21日、バイデン大統領が選挙戦からの撤退とハリス氏への支持を表明した後、民主党は恐るべき速さで、ハリス副大統領を中心とする挙党一致体制を築いた。
3つ目の「現職大統領の出馬」は、バイデン大統領の撤退で「真実でない」に転じた。実は、2つ目の「与党内の競合なし」は民主党の命運を握る極めて重要なカギだった。リクトマン教授が再三警告してきたように、党内で指名候補争いが起こり、2つ目のカギが「真実でない」ということになれば、民主党はバイデン大統領の撤退で、「与党内の競合なし」と「現職大統領の出馬」の2つのカギを一気に失うところだったからだ。
リクトマン教授によれば、1900年以降、「与党内の競合なし」と「現職大統領の出馬」という2つのカギを失った政権与党が大統領選で勝った例は皆無だという。
2016年の大統領選が好例だ。当時、オバマ大統領は2期目で退任が決まっており、現職が出馬しない選挙だった。民主党予備選では、クリントン氏とサンダース上院議員(バーモント州選出、無所属)が激しい指名候補争いを繰り広げ、サンダース氏は15年初夏になっても予備選から撤退せず、7月半ば近くになって、ようやくクリントン氏を支持した。そして、本選の結果は……まさかのトランプ氏勝利だった。