自分を前進させる意識を変えてはいけない
このときのみならず、2006年にソニー・コンピュータエンタテインメント(現在のソニー・インタラクティブエンタテインメント)の社長を任されたときも、さらには2012年にソニー(現在のソニーグループ)の社長を任されたときも同じでした。
自信なんてなかったけれども、その人事は、何もくじ引きで決まったものではない。誰か一人の独断と偏見で決められたことでもない。錚々たる幹部メンバーの話し合いによる総意で決定されたことには違いありません。
だったら腹をくくるしかない。「尊敬し、信頼している人たちが任せたいと言ってくれているのだから、そういうことなんだろう。がんばって期待に応えよう」という思いだけで、これらの大役を引き受けることにしたのです。
ソニーのような大企業の社長就任時の話をされても、社会人として働き始めたばかりの今のあなたとはかけ離れすぎていてよくわからないと感じてしまったかもしれません。
ただ、ここで私が伝えたかったのは、どのような立場になっても、どのような仕事を任されても、自分を前進させる意識は基本的には変わらないということです。
「そこには必ず理由がある」――
一見、つまらない仕事を振られたときも、あるいはあなたには荷が重すぎると思う仕事を任されたときも、さらには社長のような大役を打診されたときですらも、そう信じることで熱心に取り組むことができるでしょう。
「無意味な仕事」だと感じた時は…
失敗したっていいのです。若いうちは、もしかしたら、そこで失敗させることにこそ上司の意図がある可能性も高い。
実際、本当に目端の利く上司は、往々にして、絶妙なタイミングで絶妙な失敗を部下に体験させるものです。ただし1つ厄介なのは、仕事を振る側の資質もピンキリであることです。
現実問題として、何の考えもなしに仕事を振る上司も少なくはないでしょう。いわゆる「ブルシット・ジョブ」を平気でさせる上司に当たってしまう可能性もあります。
そんな場合が疑われるときも、「何か理由がある」と信じて熱心に取り組むべきか。
結論から言えば、「熱心に取り組む」という部分については「イエス」です。つまり「理由がある」と信じられなくても、熱心に取り組んだほうがいい。
こう聞いて、「理由がある」と信じられなければ、熱心に取り組むこともできないと思ったに違いありません。しかし1つだけ間違いないのは、どんなにその仕事が無意味に思えても、上司に楯突くのは得策ではないということです。