※本稿は、平井一夫『仕事を人生の目的にするな』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
「振られた仕事」こそ前向きに取り組んだほうがいい
あなたが採用されたことには理由があるのと同様、社内で振られる仕事にも、必ず意図や理由があるものです。自分としては「この仕事は何のため?」「どうして自分に振られたのか」と疑問に思うこともあるかもしれません。
しかし、まだあなたには仕事のことが何もわかっていません。まず仕事を選別できる立場にないし、仕事の意味や要不要をジャッジできるような知識も経験もない。
ですから、基本的には「何かしらの意図や理由があって、その仕事は自分に振られたんだ」と思ってください。
あなたがどう受け止めようと、どのみち、やらなくてはいけないのが仕事です。ふてくされていたら、「じゃあ、それはやらなくていいから、もっといい仕事をあげよう」となるのか。なるのなら、いくらでもふてくされたらいいと思いますが、そうはなりません。
どのみちやらなくてはいけないのなら、ポジティブに変換して取り組むに越したことはないでしょう。
実際、「なんでこんなことをやらなくちゃいけないんだ」と不満たらたらで取り組むのと、「何かしら意味があるんだろう」と思って取り組むのとでは、その仕事から学び取れるものに雲泥の差が出るものです。
この意識でいることは、新人から中堅になり、ベテランの域に達しても、ずっと大切です。
つまらない仕事を振られて「なんで自分が?」と思ってしまったときも、逆に大役すぎて「どうして自分に?」と思ってしまったときも、「何かしら理由、意図があって自分に振られたんだ」と思えば、前向きに取り組むことができるでしょう。
私が“大役”を引き受けた理由
実は、私自身もそうだったのです。
1996年、ソニー・コンピュータエンタテインメント・アメリカ(SCEA)の副社長(のちに社長)になってくれと言われたときには、「え? 僕ですか」と思いました。
かねてより、私はCBS・ソニーグループの大先輩である丸山茂雄さんの頼みで、「プレイステーション」の北米での展開を手伝っていました。
丸山さんは、ソニー・ミュージックエンタテインメント社長などを歴任し、世界的に有名なゲーム機・プレイステーションの誕生に大きく貢献した人です。
やがて丸山さんはSCEAの会長を兼任するようになり、日本とアメリカを絶えず行き来して経営に当たっていたのですが、さすがに激務すぎたのでしょう。半年も過ぎると「君が社長をやってくれ」と言われました。
当時、まだ35歳と若かったこともあり、私は、自分が社長の器とは到底思えませんでした。きっと現地の社員たちに反発される。でも、あの丸山さんが言うのだから何か理由があるはずだとも思いました。その期待に応えたいと思って引き受けることにしました。