年をとっても活躍できる人は何が違うのか。元ソニー社長兼CEOの平井一夫さんは「それは30代の過ごし方で決まる。例えば、すぐに上司に「報告・連絡・相談」をしようとする人はその後のキャリアで伸び悩むだろう」という――。(第2回)

※本稿は、平井一夫『仕事を人生の目的にするな』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

話し合う二人のビジネスマン
写真=iStock.com/PrathanChorruangsak
※写真はイメージです

「30代のホウ・レン・ソウ」は自分で考えてから

まだ経験の浅い20代のうちは、おそらく、それほど大きな仕事を任されることはありません。仕事を振るほうとしても、若手社員には主に「経験から学ぶこと」を求めているものです。

たとえトラブルが起こっても大損害にはならないような仕事を振られることが多いはずですから、積極的にトライアル・アンド・エラーをするつもりで取り組むといいでしょう。

トラブルから学ぶ必要はありますが、責任を感じすぎて気に病むことはありません。よほどEQ(Emotional Quotient:心の知能指数の略で、自己や他者の感情を理解し、適切に管理・活用する能力)の低いダメ上司でもない限り、一方的に責められることもないでしょう。EQの重要性については改めて後述します。

しかし、それなりに経験を積んで30代に突入してからは違います。

30代にもなれば、責任あるポジションに就けられたり、大きなプロジェクトの重要なポストを任されたりするでしょう。そうなると、当然、トラブルとの向き合い方も20代のころのままでは通用しません。

そこで重要なのが、「まず、自分で考えてからホウ・レン・ソウできるようになること」なのです。よく言われますが、ホウ・レン・ソウ――つまり「報告」「連絡」「相談」は、会社に入ってすぐ覚えるべきことです。

30代からは“現状報告”だけではダメ

20代をつつがなく過ごして30代に入ったら、それぞれを、もう1つレベルアップさせなくてはいけません。

平井一夫さん 元ソニー社長兼CEO
写真:小田駿一/フォトリタッチ:兵頭誠(VITA inc.)
平井一夫さん 元ソニー社長兼CEO

30代からは「ホウ・レン・ソウは自分の頭で考えてから」が鉄則。具体的には「ホウ・レン・ソウの結果、上司に何を求めるのか」を念頭に、「何が起こっているのか」「それに対してあなたはどう考えたのか」を明確に伝えるということです。

たとえば、失敗や難局にぶち当たったときの「報告」はどうしたらいいでしょうか。20代までは「こういう失敗をしてしまいました」「こういう難局にあります」という現状報告さえできれば合格です。

しかし30代からは、まず自分の頭で考えて、あなたなりにいくつか対策案を編み出してから、上司の「判断」を仰ぐように報告する必要があるのです。10年弱の仕事経験があれば、それくらいはできるだろうという目で上司をはじめ周りの人たちも見ているはずです。

うまくいくと思っていたものが頓挫しかけたら、誰だって焦ります。

でも、そこで急き込んで上司の元に走るのではなく、一呼吸置く。そして冷静に状況を眺め、分析する。ことは急を要する場合もあるので時間をかけすぎるのは禁物ですが、まず冷静に状況を把握し、理解すること。

その上で、「この状況だったら、A、B、Cの3つの対策が考えられるが、どれが一番いいだろうか。それぞれのメリットとデメリットを勘案すると、Cが一番、筋がいいかもしれない」くらいまでは考えてから、上司に報告するのが望ましいでしょう。