偏った情報に流されないためには何が必要か。問題解決コンサルタントの岡佐紀子氏は「自分が求めている情報ばかりに囲まれていると、自分が見ている世界が正しいという心理に陥りやすい。多角的に物事を疑うには4つのアプローチがある」という――。

※本稿は、岡佐紀子『正しい答えを導くための疑う思考』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/metamorworks
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偏った情報は集まってきやすい

現代において、疑う思考を磨く必要性はますます高まっています。なぜなら、得られる情報が膨大になった反面、自動的に私たちに入ってくる情報が非常に偏ってきているからです。

自分が求めている情報ばかりが集まる状態が続くと、知らない間に視野が狭くなっていきます。そして、自分が見ている世界が正しいという心理に陥ってしまうのです。

先日、通販でスーツを買おうと思ってパソコンで検索しました。するとその時点から、SNS広告やネット広告がスーツの広告だらけになりました。こうしたことを皆さんも経験したことがあるのではないでしょうか?

誰かと一緒にいるときに、それぞれの端末でYahoo!ニュースを開いてみてください。羅列するニュースのテイストが違うことに気づくと思います。

私たちがインターネットで何か情報を閲覧しているとき、裏側では「この人は旅行が趣味だから、旅行のときに役立つ情報を提供しよう」「今スーツを買おうとしているから、スーツが売れやすいように広告をたくさん表示しよう」というような動きが起こっています。

芸能ニュースばかり見ている人には芸能ニュースが、経済ニュースばかり見ている人には経済ニュースが表示されるはずです。インターネット上で何らかの情報を求めると、アルゴリズムによってそれに類似する情報ばかりが表示されるのです。

この機能を「フィルターバブル」と呼びます。泡に包まれたように、自分が知りたい情報や見たい情報にしか触れられなくなるというわけです。フィルターバブルは知りたい情報に関連する情報が得やすくなって便利な反面、それ以外の情報が入ってきにくくなるという弊害があります。

日常生活にもフィルターバブルは存在する

実は、このフィルターバブルはインターネットの世界だけでなく、リアルの世界でも起きています。

同じ業界の人とだけ接する、同じ会社の人以外とはほとんど話さない。社内でも関連する部署の人とはよくコミュニケーションを取るけれど、関連性の薄い部署のことはほとんどわからない。このように現実世界でも何気なく過ごしていると、特定の人とだけ関わることになります。その結果、自分の周りに集まってくるのは、自然と似た価値観の人になっていきます。

そうすると、現実世界でもネットの世界と同じようにフィルターバブルが生じてしまうため、自分にとって心地よい情報しか選べなくなってしまうのです。

それによって何が起こるのでしょうか?

自分の信念や価値観を肯定する人ばかりが集まり、自分の信念や価値観が正解であるという意識がさらに強まっていくのです。

これをネットの世界では「エコーチェンバー」と呼びます。よくSNSなどで、同じ価値観を持つ人同士でリプライをしている様子を目にすることがありますよね。

同じ価値観の人が集まって心地よいだけならいいのですが、ときに非常に排他的で過激な発言が散見されることがあります。思想が過激化して、他者を攻撃するという行動に出てしまう危険性もあるのです。

こうした危険から身を守るためにも、疑う思考はとても役に立ちます。疑う思考を高めることによって、多角的に物事を見ることができるようになるのです。