円安容認政策を続けるか、利上げを容認するか
実質賃金のマイナスが長く続いたことから、ここへきて消費にも陰りが見える。物価が上がっているので一見、消費額が増えているように見えるが、物価上昇分を差し引いた「実質消費」がマイナスになっているのだ。このままでは不景気なのに物価上昇が続くという「スタグフレーション」に陥りかねない。
7月末に日本銀行が金利の引き上げを決めたことで、8月頭に株価が大暴落した。円安を止めるためには、日米の金利差を縮小させるために日本が利上げすることが求められるが、ここ1年の株高は、円安によって円建ての株価が上昇している面も強い。つまり、円が「劣化」した分、資産価格が上昇するという結果になってきた。だから逆に金利を引き上げることで円高方向に誘導しようとすれば、当然のごとく、株価が大きく下がるということになる。
次の首相が、岸田流の円安容認政策を採り続けるのか、逆に円安を止めるための利上げを容認するのかで、日本の経済情勢は大きく変わる。利上げを容認する政策をとれば、株価が大きく下げることにつながるわけで、これも総選挙を控えた次期首相が、それを受け入れられるかどうかは微妙だ。
「改革」を掲げて選挙で戦えるのか
日本経済を根本から強くするためには構造改革が必要だという考え方から、小泉氏のように規制改革に取り組む姿勢を強調する候補もいる。「ライドシェアの全面解禁」や「解雇規制の緩和」は立憲民主党など野党が強く反対している政策で、これを総選挙で掲げれば、与野党対立は鮮明になる。一方で、物価上昇などで経済困窮が進んでいる国民に、改革の痛みを受け入れる余力があるか。つまり、改革を掲げて選挙で戦うことが本当にできるのか、という疑念もある。
岸田首相が残すことになる数々の難題を、強いリーダーシップで解決できる人材は誰なのか。日本の命運を担う自民党総裁選ということになる。