「増税」に早々に決着を付けなければならない

岸田内閣は2022年末、2023年度から27年度の防衛費の総額を43兆円程度と定め、それに必要な追加の財源が14兆6000億円にのぼると見込んだ。そのうえで、財源として、法人税と所得税、たばこ税の3つを増税することで、2027年度までに1兆円強を賄うとしている。法人税の現行税率に4.0%から4.5%上乗せする付加税を課すほか、所得税も税額に1%の付加税を課す。一方で、現在付加されている「復興特別所得税」の税率を1%引き下げて実質的な負担増を無くすとしているが、2037年までと決まっていた復興特別所得税の課税期間をさらに延長する方針。また、たばこ税は1本当たり3円相当を段階的に引き上げるとしている。

ところが、増税には自民党内からも反発する声が強く、2022年末の与党の税制改正大綱にも防衛増税の実施を盛り込めなかった。「2027年度に向けて複数年かけて」増税するとされ、「2024年以降の適切な時期」に増税を開始するとされ、事実上、増税の実施は先送りされている。次の首相はこれに早々に決着を付けなければならない。

砂時計の横には積んでおかれたコイン
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「解散総選挙の日程」と「増税日程」の板挟みになる

焦点は今年末の税制改革対抗に実施時期を明記できるかどうかだが、来年秋までに解散総選挙を実施しなければならないタイミングで、増税議論はできないというムードが強い。財務省の中堅幹部も「今年の大綱にも盛り込めないのではないか。2026年度の実施すら難しい」と見ており、解散総選挙後まで増税議論は封印される、という見方が多い。

実際、候補者の多くが増税に批判的な主張をしている。岸田内閣を党側から支えてきたはずの茂木氏が「経済成長で財源は確保できる」として防衛増税ゼロを主張。高市氏も「今は反対」と述べている。誰が首相になっても、解散総選挙の日程と増税日程の板挟みになるのは間違いない。

もう1つの岸田首相の「置き土産」が「原発政策」だ。いま、経済産業省の総合資源エネルギー調査会で、「第7次エネルギー基本計画」の策定に向けた議論が進んでいる。