再開発を後押しする「容積率ボーナス」
第1種市街地再開発事業(以下、再開発事業)では、もとからの建物・土地所有者等は、保有していた土地・建物の評価に見合う再開発ビルの床(権利床という)に等価で置き換わる。事業に参加しない建物・土地所有者等は、保有していた土地建物の評価分を金銭で受け取り転出することとなる。
そして、区域内の土地をまとめて、その土地を高度利用することで新たに生み出される床(保留床という)を売却した保留床処分金で事業費を賄うという仕組みとなっている。また、事業によって異なるが、保留床処分金とともに自治体から再開発で生み出される公共施設の整備費や国・都道府県・市町村からの補助金が入っているケースもある。
再開発事業が多用される理由は、個々の建物の建て替えの場合にはないような税制・金融等優遇措置が用意されているだけでなく、計画内容によっては大幅な容積率の割増しといった規制緩和が可能となること、そして、事業推進のための強制力が付与されていることが挙げられる。
再開発事業を行う立場からすると、容積率の割り増しを受けて再開発ビルを「高く大きく」をつくることができれば、新たに生み出される床=売却できる床の量を増やすことができ、再開発による収益も確保しやすくなる。
「法的な強制力」に支えられる再開発事業
特に、再開発事業という手法の場合、市街地再開発組合の設立は、都市再開発法において区域内の地権者5名以上で、区域内の宅地所有者及び借地権者のそれぞれ3分の2以上(面積及び人数)の同意でよいとされている。つまり、再開発事業の場合、3分の1弱の反対があっても事業を推進できる法的な強制力が付与されている。
一方、分譲マンションが建て替え決議をする場合には、区分所有法において区分所有者の5分の4以上の賛成(今後の法改正で4分の3などに引き下げられる可能性あり)が必要とされている。このように地権者等の同意要件から見ると、再開発事業は、事業主体にとって使いやすい事業手法と言える。
ではなぜ、このような強制力や各種支援策が可能となっているか?
それは、法制度上、再開発事業が「公共性」を有するものとされているからである。そして、この「公共性」は、都市計画決定手続きや自治体による事業計画認可手続きなどにより担保されると説明されることが多い。