まだまだデータを活用できていない
筆者も京セラドーム大阪で、これまで見たこともないような大飛球を外野席上段に叩き込む大谷の打撃練習を見た。大谷が一振りするたびに、球場中から潮騒のような声がドーム中に広がった。観客が発する「ため息」が潮騒のように聞こえたのだった。彼のパフォーマンスは野球選手以外にも多くの人々に、強烈なインパクトを与えていた。
これまでNPBでは一軍選手でも、「トラックマン」や「ブラスト」を活用する選手はほとんどいなかった。「ブラスト」は定価2.2万円ほど。高校の野球部でも購入できる手頃なものだ。
二軍の選手はコーチなどの指示で装着することはあるが、一軍で自分からやっている選手は少ない。ましてや「トラックマン」で打球速度を計測する選手はさらに少なかった。星川はWBC閉幕後「少しずつだが活用する選手が増えてきた」と数球団の関係者から聞いた。星川のもとにも直接、使い方についての相談がいくつかあった。
NPB球団ではポータブルの「トラックマン」は1球団2〜3台。高価なうえにランニングコストもかかるからだ。ちなみにMLBではポータブルの「トラックマン」を20〜30台くらい買っている球団がいくつもある。その背景には諸事情があろうが、日本もアメリカも同じハードを持っていながら、日本では十分に活用できていない。
星川は「日本がアメリカと全く同じようなデータドリブン(データ活用法)であるべきとは思いませんが、その違いについて議論することはとても意義のあることだと思います」と語る。