パリオリンピックでは出場選手への誹謗中傷が相次いだ。スポーツライターの広尾晃さんは「オリンピックだけでなく、プロ野球でも深刻な問題になっている。各球団は、誹謗中傷に反対するメッセージを大きく掲げるべきだ」という――。
誹謗中傷は現場で起きているんじゃない
8月11日に閉幕したパリオリンピックでは、悲喜こもごものドラマが連日放送された。気になったのはSNS上で、敗退した選手などに向けて、誹謗中傷のコメントがあふれかえったことだ。
この誹謗中傷にはプロ野球も対応に苦慮している。
2024年の今シーズン開幕時にNPB(日本野球機構)は、公式サイトにこんなメッセージを掲示した。
プロ野球ファンのみなさまへ ~ SNS等への投稿についてのお願い ~
昨シーズンはSNS等において、懸命にプレーする選手に対する誹謗中傷、侮辱や脅迫等の心ない行為が相次ぎました。(中略)ファンのみなさまには、誹謗中傷等を拡散しないこと、SNS等での投稿にあたってマナーを守っていただくことを改めてお願いするとともに、何より選手の力になる前向きなご声援をたくさん送っていただけることを心より願っています。
また日本プロ野球選手会は昨年9月に顧問弁護士による対策チームを立ち上げ、今年になって「プロ野球選手に対する誹謗中傷行為等への対応報告」というレポートを2度にわたって発表している。
楽天、日本ハム、中日などの球団も誹謗中傷に注意喚起し、法的措置も辞さないというメッセージを出している。
こうした状況を見れば、プロ野球の観客はずいぶん質が劣化したように思える。さだめし観客席でも汚いヤジが飛んでいるのではないか、と思うかもしれない。しかし、NPBの公式戦で、選手に向けて心無いヤジが飛ぶことはほとんどない。今問題になっているのはSNSでの誹謗中傷だ。