なぜコロナ禍を経ても有人窓口が必要なのか

これを受け、JR東日本は2024年5月に「みどりの窓口削減の凍結」を発表。当面はこの数を維持し、閉鎖直後で設備が残る一部の駅では、利用に応じて臨時窓口を設置できるようにするとして方針を転換した。コロナ禍以降、スピードアップを狙ったチケットレス化は再考をせまられることになった。

指定席特急券を取り扱う自動券売機が登場したのは、みどりの窓口設置から約30年後の1993年のことで、1990年代末から2000年代にかけて主要駅を中心に拡大していった。

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えきねっとで予約した指定席特急券を、みどりの窓口に並ばずに券売機で発券できるようになったが、代替というより補助的な位置付けだった。

2000年代後半になると、特急券だけでなく乗車券、定期券などの発券や指定券の乗車変更、払い戻しなどに対応した多機能券売機や、マイクとカメラを用いてオペレーターが遠隔対応する「もしもし券売機Kaeruくん(2005~2012年)」、「話せる指定券発売機(2020年から導入中)」などが登場。これら代替手段の登場で、JR東日本はみどりの窓口の縮小や削減に着手した。

原因は「えきねっとの使いにくさ」だけではない

近年は多機能券売機でさえも撤去が進んでいるのが実情だ。JR東日本からすれば「人だけでなく機械も削減」にとどまらず、一気にオンライン販売、チケットレスへ移行したいのが本音である。その受け皿となる、えきねっとは2021年6月に大規模リニューアルされたが、ユーザビリティに対する評価は高くない。

ただし、問題はえきねっとだけにあるとは言い難い。みどりの窓口を中心とする時代が約40年(1965~2005年)、指定席券売機が急速に普及したのが15年(2005~2020年)に対して、本格的なチケットレス化は始まってまだ5年程度だ。みどりの窓口を削減する取り組みは、長い時間をかけて進んできたものであり、コロナ禍という非常事態が後押ししたとしても、数年で解決するようなものではないからだ。

もうひとつのチケットレスの動きがQRコードの活用だ。厳密には、磁気乗車券のQRコード乗車券への置き換えは「チケットレス」ではないが、現行の乗車券システムを置き換える意味ではチケットレスの範疇はんちゅうといえるので、あわせて紹介しておこう。

鉄道の歴史は乗車券の歴史である。近距離乗車券に用いられる長さ3cm、幅5.75cmのきっぷは、1830年代にイギリスの鉄道技師トーマス・エドモンソンが考案したことから「エドモンソン券」と呼ばれる規格で、世界各国で200年近く用いられている。