回数券の「デジタル化」も促進

このほかにも新幹線では、新幹線停車駅が2駅以上含まれるSuica定期券で新幹線自動改札機を通過すると、自由席特急料金を引き去ってチケットレス乗車できるサービスや、事前登録したSuicaで運賃・自由席特急料金を支払える「タッチでGo!新幹線」を提供し、定期・定期外のチケットレス利用を進めている。

もうひとつ印象的な出来事が回数券の「デジタル化」だ。回数券は定期券に次いで割引率が高く、根強い愛用者を持つ乗車券だが、発売形式は磁気式乗車券のみで、磁気券削減・廃止の足かせとなっていた。しかし安易に廃止すればサービス低下だと大反発が起きるのは必至だ。

そこで2021年3月、回数券の代替として導入されたのが、同一月内に同一運賃区間を月10回利用で運賃1回分、11回以上の利用で1回ごとに運賃の10%相当のJREポイントが還元される「リピートポイントサービス」だ。

回数券には、特定の「A駅⇔B駅間」しか使えない区間式と、券面の料金「○○円」を運賃に充当できる料金式があり、どちらも10回分の金額で11回利用できるのが一般的だ。JR東日本の従来の普通回数券は前者だったが、リピートポイントはそのどちらでもなく、大宮~上野間と大宮~新宿間のように同じ483円の区間が対象となる。つまり、あわせて5往復(10回利用)すれば483円分のポイントが戻ってくる仕組みだ。

波に乗って「みどりの窓口」を大幅削減しようとしたが…

リピートポイントの定着を見たJR東日本は、いよいよ2022年4月に「9月末をもって普通回数券(通学割引回数券などは除く)の発売を終了する」と発表し、明治期から長い歴史を持つ回数券の歴史が幕を閉じた。

同社は2021年5月、近距離以外の乗車券類のうち、券売機や、えきねっとなど、みどりの窓口以外で販売した割合が2010年度の約50%から2019年度は70%、2020年度は80%まで上昇していると発表。

チケットレス化・モバイル化のさらなる促進で、2025年度までに、えきねっと取り扱い率を約60%、自社新幹線のチケットレス利用率を約70%に引き上げる新目標を設定し、あわせて、みどりの窓口を2025年度までに7割(首都圏は231駅から70駅程度、地方では209駅から70駅程度)削減すると発表した。

2023年度末時点の実績値は、えきねっと取り扱い率が55%、チケットレス利用率が56%で、みどりの窓口の削減は目標の半分程度まで進んでいる。一見、バランスよく進んでいるように見えたが、2024年3月下旬から4月上旬にかけて、年度末・年度始めの定期券購入、急回復するインバウンド旅客の乗車券引き換えなどが殺到し、一部のみどりの窓口で大混乱が生じてしまった。