麻酔を使うことには当然リスクもある

麻酔を使えば、痛みがなくなり、何のリスクもなくなると誤解されていることがありますが、じつは全ての麻酔はアナフィラキシーなどの副作用のリスクを伴います。注射薬だけでなく、キシロカインなどの浸潤麻酔でもアナフィラキシーショックを起こすことがあるのです。これは症例が積み重なっていくと、避けられないリスク。こうしたリスクを避けるために、浸潤麻酔薬自体を置いていない医療機関もあるようです。

また④の静脈麻酔は、流産手術や採卵などの手術の際に行うことがあるもの。場合によっては呼吸が止まるなどの重篤な副作用も起こり得るため、呼吸や血圧の管理などが必要になります。そのため、婦人科の診察や短時間の検査・処置などに気軽に行えるものではありません。麻酔を使うことのメリットよりもリスクが高くなってしまうからです。また、静脈麻酔は、醒めるまでに時間がかかります。診察や処置が終わっても、すぐに帰宅することはできません。

つまり、膣や子宮や卵巣の痛みをしっかり取れる薬がない以上、麻酔を使うメリットは少ないといえるでしょう。反対に、よほど強い痛みを伴わない限り、できれば麻酔を使わないほうがリスクを回避でき、すぐ帰宅できるというメリットがあるのです。

写真=iStock.com/Portra
※写真はイメージです

保険診療ではなく自費診療になることも

次に費用についてみていきましょう。麻酔を使うと、別途費用がかかることがあります。保険が通るかどうかに関しては地域差や変動がありますから、あくまでも現在の私のクリニックの例として読んでください。

①を使用する場合は保険請求は通らないので、当院の場合は持ち出し(つまりサービス)にしています。そして、ミレーナ挿入のために②を使用する場合は、現在のところ保険の範囲内で数百円のコストを請求しています。

③に関しては設備投資とバイタル管理などのため人手がかかり、診察室での所要時間も長くなるため、自費診療での案内となります。その際は検査の費用やミレーナ挿入に関しても全額が自費診療になります。麻酔込みのミレーナ挿入が6万6000円、麻酔込みの子宮体がん検査が1万5000円くらいです。

④に関してはバイタル管理や移動などのために必要な人手が大幅に増え、回復室の整備、所要時間が長くなるなどのため、通常外来の中での対応は多くの医療機関にとって難しいでしょう。

人手や設備、コストの問題もあり、婦人科診察で①を使用するのは、ご自身で希望を伝えてくださった場合、診察時に痛みを訴えられて使う場合となっています。ミレーナの場合はこちらから麻酔の選択肢をお伝えし、選んでいただいています。傍頸管ブロック、頸管内ブロックに関しては費用の自己負担は少なくなっています。