医師が「やめてほしい」と思う患者の言動は何か。小児科医の松永正訓さんは「医師の仕事は患者を診ることだが、それをさせてくれない患者も中にはいる。よくあるのが診察の無断キャンセルだが、それよりも断トツで迷惑な患者がいる」という――。

※本稿は、松永正訓『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

ストップ!!!手のひらを示す医師
写真=iStock.com/Cimmerian
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予防接種の予約をすっぽかす患者

編集者から、「診療したくないような迷惑患者っていますか」と質問を受けました。私はつねづね患者さんを診るのが医者の仕事と言っていますので、「診たくない患者というのはいません」と返事をしました。

しかしよくよく考えてみると、いないこともありません。それは要するに、私が診療したいと思っているのに、それをさせてくれない患者さんです。どういうことでしょうか。

まず約束を破る患者さんです。私のクリニックは、一般診療に関しては予約制にしていませんが、予防接種と健診の時間帯だけは2カ月前から予約をとっています。

予防接種というのは、私のクリニックがある千葉市から委託を受けて実施しているものです。市に必要な注射薬を申し込んで冷蔵庫で保管して準備をしておくのです。急に来られても注射薬がなかったら予防接種はできません。

うちは、大行列ができるクリニックというほどの人気ではありませんが、それでも2カ月前にたちまち予約の枠は埋まります。私としては、限られた時間の中、少しでも多くの子どもに予防接種や健診を行ないたいと最大限の努力をしています。

また、秋になると、土曜日の午後を使ってインフルエンザワクチンを大勢の方に接種します。毎年700人の枠を作って予約を受け付けるのですが、予約開始日の朝一番には予約枠がいっぱいになってしまいます。10年くらい前は私もまだ体力があり、この枠は1000人くらいだったのですが、現在では700人が精一杯です。これでもベストを尽くしているのでご容赦ください。

ワクチンも予約枠も無駄になる

でもね……、約束を破る人がいるんですね。単に忘れただけかもしれませんが、ワクチンを予約した方には予約時刻の前にお知らせメールが届くシステムになっています。それでも、無断キャンセルをする人がいます。キャンセルをするんだったら言ってください。ほかの人にその枠を譲りますから。

土曜日の午後のインフルエンザワクチン接種には、60人以上の患者さんが来ます。多数の人が一度に訪れますので、あらかじめワクチンを直前溶解して患者さんを待っています。ですので、ドタキャンされるとワクチンを捨てることになります。

うちのクリニックの被害は我慢できますが、そのために接種の機会を逃した方がいると思うと、非常にやるせない気持ちになります。