※本稿は、医療ガバナンス学界のメールマガジン「Vol.24126 世界で増える若年層のがん:日本ではとくに、女性の乳がんと子宮がん」を再編集したものです。
アメリカ人研究者が「がん罹患率」を予測した
6月10日の米医師会雑誌に、米国立がん研究所(NCI)フィリップ・ローゼンバーグ博士らは「ジェネレーションX(1965年から1980年生まれ)世代は、60代になると、ベビーブーマー(1946年から1964年生まれ)世代よりもがん罹患率が高まる」ことを予測し、「米国のがん罹患率は、今後数十年間、受け入れられない程に高いままであるだろう」と結論づけました(1)。
自らをベビーブーマー世代と称するローゼンバーグ博士は、
「自分の世代が両親のグレイテスト世代(1908年から1927年生まれ)やサイレント世代(1928年から1945年生まれ)よりも恵まれているかどうか」
「彼の子供たちのミレニアル世代(1981~1996年生まれ)とZ世代(1997~2012年生まれ)が、さらに恵まれているかどうか」
を確かめたかったそうです(2)。
博士らは、1992年から2018年までに米国でさまざまな種類(女性では20部位、男性では18部位)の「浸潤性」がんと診断された380万人のデータを用いて、X世代とベビーブーマー世代のがん発生率を比較しました。
「浸潤性」とは、発生した場所から周囲の組織に広がったがんを指します。そして、X世代が60歳になったときの、がん罹患率を予測しました。
結果は、ローゼンバーグ博士が望んでいたものではありませんでした。
1965年~1980年生まれ(X世代)は、親世代より「がん」になりやすい
ベビーブーマー世代と比較して、X世代の女性は甲状腺がん、腎臓がん、直腸がん、子宮がん、結腸がん、膵臓がん、卵巣がん、そして非ホジキンリンパ腫と白血病の増加が予測されました。
またX世代の男性は、甲状腺がん、腎臓がん、直腸がん、結腸がん、前立腺がんの増加が予測されました。
「がん」罹患率がサイレント世代とベビーブーマー世代よりX世代が増加しているのは、アジア系または太平洋諸島民の男性を除くすべての人種および民族グループでした。
最も大きく増加したのはヒスパニック系女性で35%、続いてアジア系または太平洋諸島系女性20%、白人女性15%、黒人女性6%。また、ヒスパニック系男性14%、白人男性12%、黒人男性12%の増加が示されました。
明るい話題としては、X世代の女性はベビーブーマー世代に比べて肺がんと子宮頸がんが減り、X世代の男性は肺がん、肝臓がん、胆嚢がん、非ホジキンリンパ腫が減少したことです。
これは理にかなっています。喫煙防止キャンペーンは、過去50年間で最も成功した公衆衛生キャンペーンの1つで、肺がんが減りました。また、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンなどの公衆衛生対策は、子宮頸がんの減少に役立っています。ただし、すべてのがんを合わせると、増加したがんが減少したがんを数的に上回りました。