お金持ちより時間持ち

仕事で「生涯現役」を目指す生き方もあるでしょうが、一方では、好きなことをする時間が欲しいと仕事を早めに退いてしまう生き方もあっていいはずです。Yさんも、そんなお金持ちより「時間持ち」という生き方を選んだ一人です。

Yさんとの付き合いは、もう十年以上になるでしょうか。中堅の医療機器メーカーを定年前に辞めて、その後はフリーの医療コンサルタントをしています。

「下の子が大学を出て社会人になったので、そろそろいいかなと思ったんだ」と話していますが、メーカーを早めに辞めた本音は、好きなことを好きなようにできる体力が残っている間に、自由に時間を使える立場を確保したいという気持ちが強かったのだそうです。

会社を辞めて最初に試みたのは、アメリカでのホームステイ生活でした。若い日からの夢をようやく実現させたのです。

目的地に選んだのはケンタッキー州。理由は特になく「バーボンが好きだったから」と笑っていますが、ここでアメリカ人家庭に滞在しながら語学学校に通い、残りの時間や週末はレンタカーであちこち旅行三昧だったとか。

アメリカの古きよき時代の面影が残っていて、ニューヨークやロサンゼルスとは一味違ったアメリカを体験できたそうです。

それ以来、Yさんはほとんど毎年のように、半月〜一カ月くらいの海外ホームステイに出かけました。

北欧や、ニュージーランドへ――。一回あたりの費用は40万円前後(当時)。パッケージツアーに比べると割安です。しかもホストファミリーとその後も長く親しい関係になれるなどのメリットも大きな旅の楽しみ方だと、大いに気に入っている様子です。

明確な目的があれば、ケチケチ生活も楽しい

「言葉の壁が……」と悩む必要はありません。カタコト英語で十分です。ホームステイを受け入れてくれるファミリーは、言葉が満足にできない人への対応は馴れっ子になっているし、乏しいボキャブラリーでもちゃんと意思の疎通はできるものです。

保坂隆『お金をかけない「老後」の楽しみ方』(PHP研究所)

言葉はできるに越したことはありませんが、「達者でなくてもコミュニケーションは何とかなるものだ」という自信を得ることもできるでしょう。これも意外なメリットといえるかもしれません。

海外のホームステイに興味のある方は「日本国際生活体験協会(EIL)」などのホームステイ斡旋機関に、コンタクトを取ってみてください。EILは公益社団法人で、現在、加盟23カ国のホームステイプログラムを提供しています。

Yさんは、次はフリーの医療コンサルタントの仕事をもっとセーブして、半年か一年、海外で暮らすことを計画中だとか。そのための預金にも励んでいるそうで、ふだんの暮らしは「ケチケチ生活だよ」と大きく笑います。

こんな明確な目的があれば、ケチケチ生活も楽しいかもしれませんね。

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