「オバマの傀儡」より「トランプ再登板」

1つ言えるのは、トランプ氏が勝利したほうが日本にとって都合がいいということだ。

ハリス氏が大統領になった場合、基本的にはバイデン氏の路線を踏襲する。ハリス氏の選挙は、オバマ元大統領の選挙を支えたデービッド・プルーフ氏やオバマ氏からバイデン政権に送り込まれていたアニタ・ダン氏ら「チーム・オバマ」が支えている。

ハリス氏自身は、女性でインド系、そして検事出身という特性を活かし、当選すれば、外交では国際協調路線、内政では中低所得者への支援や環境対策に重点を置くと見られるが、それらは、良く言えば、オバマ氏やバイデン氏が敷いてきた安定したリベラル路線の踏襲であり、悪く言えば「オバマ政権の傀儡」に過ぎない。

これに対し、トランプ氏が再登板することになれば、国際社会には大きな変化が生じる。もちろん悪い影響もあるだろうが、膠着こうちゃく状態にある国際情勢に風穴が開くという点では「買い」だ。

共和党が、トランプ氏の考えを反映し公表した政策綱領やトランプ氏の発言などから、日本に関係が深い部分をまとめておく。

これまでの異常な円安ドル高に終止符

アメリカ第一主義の経済政策

トランプ氏は5月23日、SNSで円安ドル高について、「アメリカにとって大惨事だ」と投稿し、7月16日のブルームバーグとのインタビューでも「ドル高是正」に言及した。

インフレ抑制には「ドル高」が望ましいが、製造業復活のため、利下げに踏み切り、日米の金利差を縮小して「円高ドル安」に舵を切る可能性が大きい。

中国への「最恵国待遇」を撤廃する貿易政策

中国からの輸入品に60%超の高関税をかける。米中貿易戦争が再燃し、国内経済立て直しに追われる中国は台湾統一への道のりが遠のく。

他方で、アメリカ国内で輸入品消費が減退するなど、保護主義政策による景気の悪化で、これまでの異常な「株高・ドル高」は一変する。

同盟国にも負担を求める安全保障政策

日本や韓国には駐留米軍の経費増額を、NATO加盟国には国防費の支出増加を求める方針だが、交渉の余地あり。仮に、負担を求められても、資金さえ出せばアメリカ軍の支援が得られるとも解釈できる。

トランプ氏なら、ロシアやイスラエル、北朝鮮に対して強いメッセージを送ることができるため、ウクライナや中東で続く戦闘の膠着状態を打開できる可能性もある。

「パリ協定」など無視の環境対策

「化石燃料を掘りまくれ」と指示することで、アメリカ国内のエネルギーコストが下がり、日本なども天然ガスなどを安く輸入できるようになる。

バイデン政権のEV(電気自動車)促進策を転換するため、ハイブリッド車に比べEVへの対応が後手に回ってきた日本の自動車産業はひと息つける。BYDなど中国のEVメーカーの動きも牽制できる。