9月の自民党総裁選挙では改革を訴えた河野太郎氏が敗れ、「新しい資本主義」を掲げ分配路線をとる岸田文雄氏が新総裁・新首相に選ばれた。敗因の一つは、河野氏による改革の「訴え方」だと橋下徹氏は指摘する。では、河野氏はどう訴えればよかったか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(10月12日配信)から抜粋記事をお届けします。

(略)

改革案に批判はつきもの。河野さんは改革案をどう提示するべきだったか?

社会制度に100%完璧なものなどない。問題点をあげれば無限に出てくる。それでも、その改革をやった方がやらないよりもましだというのであれば、やる方を選ぶ。これが政治の選択というものだ。

ところが学者やコメンテーターは、改革をやらないことのデメリットのことを全く考えない。責任を負っていないからだ。改革をやらずに社会に不利益が生じても知らん顔。

机上の論において改革における問題点を列挙することで、「俺って賢いだろ!」と悦に浸る。

ここが改革を実行することの難しさだ。

改革を主張する者は、無限に繰り出される問題点の指摘に答え続けなければならない。そうなるとその改革は本当にやる必要があるのか? という雰囲気になってくる。

ところが改革をやらずに現状を維持したままでも不利益が生じるのだが、人間は新しい改革をやることのリスクには超敏感でも、現状維持のリスクには超寛容で、改革をやらないことの不利益には注意を払わない。

だから改革の主張は潰されることが多い。

河野太郎さんの総裁選における主張も完全にそのような状態に陥ってしまった。

このような事態を防ぐには次の2つの方法が有効だ。

1つは、現状維持案と改革を2つ並べて、「どちらがましか」の選択をする比較優位の議論に持ち込むこと。

2つは現状維持の問題点を列挙し、改革の必要性と大きな方向性だけを主張し、細部は専門家などに議論してもらって制度を確定すると主張すること。すなわち改革案を作る議論を始めましょうと訴えること。

ここで自分の改革案をあたかも完成案として、単独で披歴してしまうのは絶対に避けなければならない。

しかし河野さんは、自分の年金改革案や核燃料サイクル廃止案を、あたかも確定案として、しかも現状維持とどちらがましかという比較優位の議論に持ち込まずに提案してしまった。

案の定、総裁選の他候補から、またメディアやネットにおいてもボロカスに問題点を指摘されて、最後には改革案を引っ込めるような事態に陥ってしまった。

ここで河野さんの勢いは完全に途絶えた。

河野さんの改革案を否定して現状の年金制度や核燃料サイクル制度で行くにしても問題点は山ほどあるのに、河野さんの改革案との比較にならなかった。河野さんの改革案だけがボロカスに批判を受けた。

改革を主張するって、ほんと大変なんだよね。

(ここまでリード文を除き約1000字、メールマガジン全文は約9400字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》Vol.267(10月12日配信)から一部を抜粋したものです。気になった方は、メールマガジン購読をご検討ください。今号は《【岸田文雄新総裁誕生!(2)】日本の長期停滞は本当に資本主義の行き過ぎのせいか? 僕が岸田首相にぶつけた「新しい資本主義」への根本疑問》特集です。

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