無党派層を取り込める良識派コンビで勝負

そのハリス氏は、副大統領候補に、ミネソタ州のティム・ワルツ知事(60)を選び、激戦州での遊説をスタートさせた。

本命視されたペンシルベニアのシャピロ知事(51)は、ガザ攻撃を継続するイスラエルに抗議する声が全米で拡大する中、ユダヤ教徒であることがネックになったと見られる。

ワルツ氏自身は、激戦州のウィスコンシンに隣接する州の知事で、州兵、教師、アメリカンフットボールのコーチ、下院議員などさまざまな経歴を持つ庶民派知事だ。

対するトランプ氏が、「ハリスはインド系から突然黒人になった」と人種差別的な発言で物議を醸し、副大統領候補であるバンス氏も、「ハリスは、チャイルドレス・キャット・レディー(子がいない寂しさを紛らわせるために猫を飼う女)だ」などと発言し炎上していることを思えば、良識派のハリス氏とワルツ氏のコンビであれば、無党派層や、ダブル・ヘイター(バイデン氏もトランプ氏も嫌と考えていた有権者)からも支持を得やすい。

大統領選で注目すべきなのが、首都ワシントンD.C.界隈の不動産の動きだ。

たとえば、民主党から共和党に政権が交代しそうな場合、やがて3000人から4000人規模のスタッフが入れ替わることになる、選挙前から街のあちらこちらに「For Rent(空室有)」の看板が目立つようになる。「現職が負けそうだから、ひと足早くワシントンのマンションを引き払って、地元で弁護士でもやるか……」という人が増えるからだ。

その点、今は、そういう動きは全くない。つまり、民主党関係者は、「出遅れはあったがハリス氏が絶対に勝つ」と確信しているのだ。

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選挙当日までの数字はあてにならない

とはいえ、支持率の数%差などは誤差の範囲だ。8年前の2016年11月7日、ロイター通信と市場調査会社イプソスによる世論調査で、「民主党・クリントン氏の選挙人獲得予測は303人で、当選に必要な270人を大きく上回る」という予測が発表されたことがある。

11月7日と言えば、大統領選挙の前日である。しかし、蓋を開けてみると、勝ったのはトランプ氏。ニューヨークで取材しながら、「数字は本当にあてにならない」と実感したものだ。

選挙本番は11月5日で、まだ3カ月ほどある。その間には、今、日程でもめているが、大統領候補者や副大統領候補者による討論会がある。

また、一定の支持者がいる第3の候補、ロバート・ケネディ・ジュニア氏(70)がどう動くのか、世界同時株安の行方はどうなるのか、そして、ロシアやイスラエル情勢がどう変化するのかなど不確定要素も多い。現時点で「ハリス対トランプは全くの互角」、そう申し上げるしかない。