営業時間も会計方法も「店本意」

筆者が「梅」を注文したところ、肉厚の蒲焼が1枚乗ったうな重が10分程度で提供された。飲食店とは従業員の商売っ気たっぷりの愛想が楽しいものだが、この店では対応が淡々としていた。

筆者撮影
これが「梅」1600円のうな重。バリっと焼き目がついていて肉はふっくらとしている。
プレジデントオンライン編集部撮影
うな重「竹」。このボリュームで2600円(税込み)だ。

うなぎは蒸し焼きの関東風。蒲焼は表面にパリッとした焼き目があって肉はふっくらしていた。筆者にとってはこの食味は満足である。

客席について、目の前にある張り紙にはこのような文言が記されていた。

「リーズナブルな価格でのご提供を実現するため、メニューの絞り込みや営業時間の短縮、現金のみでのお会計等、至らない点も多々ございますが、ご理解ご協力のほどをお願い申し上げます」

※注:一部でキャッシュレス決済が可能な店舗もある。

「営業時間の短縮」とあるが、営業時間は11時から14時と17時から20時である。「現金のみでのお会計」にも「鰻の成瀬」なりの理由があって、これらは後述する。このように、商品構成も、営業体制も店本意で割り切った「鰻の成瀬」が、なぜ急ピッチに出店ができるのであろうか。

飲食未経験から「鰻の成瀬」ブランドを設立

山本氏は滋賀県の出身。英会話教室に5年間勤務した後、ハウスクリーニングのFC本部に10年間勤務した。ここで学んだことが、今日の「鰻の成瀬」の急成長をもたらしている。

筆者撮影
フランチャイズビジネスインキュベーション代表の山本昌弘氏。ハウスクリーニングのFCに10年間勤務して、FCビジネスを習熟した。

山本氏は、このFC本部でスーパーバイザーや、加盟店開発、新たなフランチャイズパッケージを考えたり、法務に関わったり「FCの入口から出口までありとあらゆることを経験した」という。

そこで、FCの本部を後方支援するコンサルティングを行おうと2020年9月にいまの会社を立ち上げた。

「鰻の成瀬」を始めるきっかけは、うなぎ専門店の運営を職人に頼らないオペレーションでできる仕組みを構築していた会社の社長と知り合ったことだ。

同社では中国をはじめとした海外の養鰻業者とつながっていて、現地で一次加工したものを日本に送り、店舗ではそれを仕入れて、職人ではなく機械が調理するというオペレーションができていた。「鰻の成瀬」はその仕組みを活用した形とのこと。

ちなみに、屋号の「成瀬」とは、同社の担当者の名前である。