現存するコンビニチェーンの中で最も古い店舗が札幌市にある。北海道のローカルコンビニ「セイコーマート」は、酒類を中心に扱う卸業者によって誕生した。中堅コンビニが大手に吸収されていくなか、セコマはなぜ業界王者・セブン-イレブンと互角に渡り合えるまでに成長したのか――。
※本稿は、梅澤聡『コンビニチェーン進化史』(イースト新書)の一部を再編集したものです。
現存する最古のコンビニを開いたのは酒類の卸業者
現存するコンビニチェーンの中で、現在も営業する最も歴史のあるコンビニ店舗が「セイコーマートはぎなか店」である。酒類中心の食品卸、丸ヨ西尾の社員だった赤尾昭彦が、取引のある食料品店をコンビニに業態転換させたのが始まりだ。1971年8月、セブン-イレブン豊洲店の3年も前に、北海道でコンビニが誕生していることになる。
赤尾さんは、スーパーカブに乗って店にやってきて、棚を見ながら補給する商品を手帳に書いていました。翌日には商品が配送されてきましたね。そうこうしているうちに、赤尾さんの力を貸してもらってタバコや酒の免許が下りたので、71年に私(筆者注:1号店オーナー、荻中末雄)が32歳のときに『コンビエンスストア はぎなか』の看板を出して衣替えしました(「リアルエコノミー」2010年12月29日配信)。
これより赤尾は、セイコーマートの実質的な創業者としてチェーン化に邁進し、2016年に他界するまで同社の発展を支えてきた。
なぜ、これほど早くコンビニ事業に着手したのであろうか。その理由は、主要な取引先である食料品店の将来に危機感を抱いたからだ。当時、全国に70万軒あった零細な食料品店の近代化が、国の政策として浮上していた。