赤尾はアメリカのチェーン理論を研究する中で、システムの重要性に気がついた。製造から物流、販売にいたる一貫したシステム、それを支える情報システム。30坪の小さな売場と少人数の運営態勢。客の目に映るコンビニは、家族経営の食料品店を洗練させた程度の印象だろうが、コンビニを成立させるには盤石な仕組みが必要とされるのだ。

自社製造体制を確立させるために、79年にはグループ内に食品会社を立ち上げて、惣菜の製造を開始し、その後は水産加工会社や乳業会社などを傘下に収めて、原材料の確保、および商品の製造に尽力した。物流網の整備にも早くから着手し、90年代初めにはすでに全道内の配送体制を築き上げている。

情報システムについては、店舗にストア・オートメーション・システムを早期に導入し、発注から製造、仕入れ、配送、納品までの流れを管理、加盟店が販売に専念できる体制を整えると同時に、チェーン本部としてマーチャンダイジングの精度の向上に努めている。

大手に先駆けて始めた店内調理「ホットシェフ」

赤尾は1984年に受けた取材で、次のように答えている。

売れ筋データは、あくまでも売れた筋なのです。CVSにとって必要な情報は、売れた商品の情報ではなく、明日これから何が売れるのかなのです。データからトレンド(傾向)を的確に読み取り、それに対応できるかどうかです(『食品商業』1984年12月号)。

過去に売れた商品を追いかけるのではなく、未来に売れる商品をどう見つけるのか、存在しなければ自分たちでつくるのか。特に回転の速いコンビニの商品は「鮮度」が命である。過去の商品が並ぶ売場では、安売りのスーパーマーケットと差別化ができない。コンビニの業態特性を、赤尾はいち早くつかんでいた。

そして、特筆すべきは「ホットシェフ事業(店内調理事業)」だ。94年に立ち上げた事業で、赤尾が手塩にかけて育てたカテゴリーである。この時代、おにぎり、弁当、焼き立てパンまで、本格的な主食を店内調理する大手チェーンは存在しなかったが、赤尾は店内で一から調理をして、すべての対象店舗で同じ味と仕上がりを求めた。当時は大変に難しいチャレンジであった。

この店内調理には、北海道ならではの意義がある。北海道には飲食店に不自由する町や村が多く、そうした過疎地かそちにもセイコーマートは出店している。飲食店が存在しない地域にも店を出しているほどだ。