地域らしいロードサイド型店舗に力を入れる
親会社の「いせや」は、1959年に創業した衣料品スーパーを祖としている。転機となったのが、78年から始めたホームセンター事業である。ホームセンター事業も、米国チェーンストアをモデルとして日本に移植された業態であり、衣食住のライフスタイルの中で遅れがちだった、住居関連の豊かさを追求していた。日用品からインテリア、DIY用品などを主体とする、食品とファッションを除く生活すべてをカバーする業態である。
同じように、業種・業態を拡大する多角化経営の一環として、コンビニがあった。グループの総合力を高めるため、グループが経済圏を築く北関東から新潟にかけてのエリアで、セーブオンを配置していった。86年には、群馬から商圏を拡大するために新潟地区本部を開設、87年には山形地区本部を新設して、同年100店舗を達成している。
こうした「人口が少なく、経済力の低い地域に広域のネットを張る」戦略を推し進めていく。店舗の多くをロードサイドに配置し、店舗前面に駐車場を十分に確保した。車での利用が多く、男性客の比率が高かったため、当時はたばこや飲料、雑誌、米飯、カップ麺など、男性客が好む商品を充実させていた。
売場づくりは、先行するセブン-イレブンなどの大手コンビニを意識している。先行チェーンをお手本にしながら、物流、および情報システムを整え、ロードサイドに店舗をつなげていく。セーブオンは北関東を中心に出店ペースを速めていく。
「少子高齢化や人手不足で」ローソンの傘下に
しかし、セーブオンは2017年2月1日、ローソンとメガフランチャイズ契約を締結したと発表した。これによりセーブオンが出店する、群馬、栃木、新潟、埼玉、千葉、長野の約500店舗は、18年度中にすべての「セーブオン」の看板を「ローソン」に転換するとした。
決断の背景には、先行して事業譲渡した富山県、長野県の看板替えローソンが、前年130%の売上を上げた実績がある。筆者の取材にセーブオン側は次のように説明した。
「地域密着を図るチェーンとして、さまざまな対応策を模索してきたが、コンビニ業界の寡占化、少子高齢化、人手不足による人件費の高騰など、今後の経営環境を見据え、これまで以上にお客様に満足していただけるよう、地域の皆さまのニーズに応えていくために、セーブオン全店舗の転換を決断した」
さらに神奈川を中心に首都圏をドミナントとするスリーエフも、17年度中にほぼすべての看板を、ダブルブランド店舗「ローソン・スリーエフ」へと転換した。スリーエフは業績の悪化にともない、前年度に先行して89店舗を看板替えし、商品も含めてローソンパッケージで運営を継続した。その結果、売上の対前年比が110%以上で推移したことで、全店舗の転換を決断している。
こうして、ローカルチェーンとして大手と差別化を図ってきた500店舗強の「中堅」と呼ばれるチェーンは、大手に飲み込まれていった。