過疎地ではイートインスペースが飲食店として機能

イートインスペースを備えているセイコーマートには、地域で数少ない、あるいは唯一の飲食店として機能している店もある。比較的長い時間、座って食事ができる施設は、住人にとって心強い存在となる。現在は、ホットシェフ事業の売上だけで年間150億円を超えており、道内の外食産業においてトップの地位を確立している。

ヒントはアメリカの視察から得た。80年代にフィラデルフィアのミニ・スーパーを視察した際、店の真ん中に小さなテーブルが置いてあり、そこで若者たちが店内で購入したパンを食べ、牛乳を飲んでいる光景が赤尾の目にとまった。そこにイートインスペースと店内調理のヒントがあった。ちなみに牛乳についても、後に道北の広大な牧草地を生産拠点とする「とよとみ牛乳」を、自社専用商品として全店に供給するにいたっている。

取引先への支援、中堅卸売業の成長戦略、アメリカ視察、製配販一体のサプライチェーンづくり―ローカルのコンビニが、総合スーパー勢力による大手コンビニチェーンに敗れていく中、セイコーマートは北海道でセブン-イレブンと互角に戦っていく。

大手が手を出さない北関東圏を固める「セーブオン」

群馬県は屈指の温泉大国と言われる。草津、水上、伊香保など、名湯がずらりと並び、首都圏から一泊二日、週末に車で往復するには手軽な旅行先として人気である。その道程で普段、見慣れない看板のコンビニが目に入る。山懐やまふところに入り、商店や大手コンビニが姿を消しても、その看板のコンビニは山間部に静かにたたずんでいる。

伊勢崎市に本社を置く「いせやグループ(現、ベイシアグループ)」は、1983年8月に同グループ初のコンビニ「セーブオン渋川行幸田店」を開設する。セブン-イレブンがすでに国内2000店舗に近づき、群馬も含む関東圏に着々と店舗網を築いている最中である。首都圏は大手、中堅コンビニの激戦地域となり、茨城、栃木、群馬の関東圏も主戦場となりつつあった。

3年後の86年、50店舗に達していたころ、前出のコンサルタント、阿部幸男が記事にはしない約束で、セーブオンの営業本部長と面談している。そのときの取材内容は後日解禁になるのだが、次のような大手との差別化を基本にしていた。

①コンビニに適さないと中央資本が二の足を踏むような立地でも採算に乗せる。
②人家が少ない場所でも車客に頼って出店するのが、親会社「いせや」の方針。
③当面の戦略として、人口が少なく、経済力の弱い地域に広域のネットを張る。

すなわち、初期投資や運営コストを抑制し、たとえ売上が低くても、店舗段階で利益を出せるノウハウを自分たちは持っている。それが、セブン-イレブンなど大手チェーンにはできない仕組みであり、出店立地や展開エリアにおける差別化を実現している、というのだ。人里離れた温泉地に店舗を構えていられたのも、損益分岐点を引き下げた、ローコスト経営によるところが大きい。