週6の“勤務”に見合わない…10年以上ほぼ上がらない収入

忙しい練習スケジュールの合間を縫って、ラファー選手が副業に迫られているのには訳がある。彼は、飛び込みの世界の資金調達の状況は長らく変わっていない、と嘆く。

彼が競技に初めて参加した2011年、世界トップ8入りを果たした選手たちには、それぞれ2万1000英ポンド(約400万円)が支給されていたという。だが、ラファー選手が現在30歳近くになり、世界トップ3に入っているにもかかわらず、今でも年間2万8000ポンド(約530万円)しかもらえない。

テレグラフ紙によると昨年4月時点で、イギリスの30~39歳の平均給与は3万7544ポンド(約712万円)だ。ラファー選手の年間2万8000ポンドは、それに比べてかなり低い、と記事は指摘する。

オリンピックに向けてのトレーニングは、週6日、1日8時間行われる。記事は、「少なくとも労働時間を考慮すると、ラファーが同年代の他の労働者たちと足並みを揃えているとは言い難い」と述べる。

全裸にボディペイントのケースも…“副業”が選手たちに広がっている

こうした事情から、選手たちは独自の“副業”を迫られている。チームGB(イギリス選手団)の飛び込みチームでOnlyFansのアカウントを運営しているのは、ラファー選手だけではない。ほかにも、ノア・ウィリアムズ選手(24)、ダニエル・グッドフェロー選手(27)、マティ・リー選手(26)がそれぞれ、OnlyFansにアカウントを開設している。

ダニエル・グッドフェロー選手(写真=Agência Brasil Fotografias/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons
ノア・ウィリアムズ選手(写真=Ivasykus/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

いずれのアカウントもプロフィール画像は、鍛え上げられた腹筋を強調している。競泳用水着一枚のみをまとった姿だ。ただし、露骨な性的コンテンツは掲載していないと説明書きがある。

英チームのほかにも、カナダの女子棒高跳びのアリシャ・ニューマン選手(30)、ニュージーランドの男子ローイング(ボート)のロビー・マンソン選手(34)、そしてオーストラリアの女子バスケットボールのエリザベス・キャンベージ選手(32)など、複数の選手が月額13~20ドル程度(約1940~3080円)でOnlyFansのサブスクリプションを用意している。

英デイリー・スター紙は、アリシャ・ニューマン選手の場合、全裸にヒョウ柄のボディペイントなど際どい画像を公開していると報じている。

アリシャ・ニューマン選手(写真=Barrymyles/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

日本の報奨金…金500万円、銀200万円、銅100万円

会員制アカウントの運営に乗り出すほど差し迫った懐事情だが、その一因に報奨金の少なさがある。仮にオリンピックでメダル獲得に至ったとしても、見返りは決して多くはない。

日本のスポーツ庁は、オリンピック競技でメダルを獲得した日本の選手に対し、日本オリンピック委員会(JOC)が報奨金を支給すると説明している。

その額は、金で500万円(2012年ロンドン大会までは300万円)、銀で200万円、銅で100万円だ。仮に銅メダルを獲得したとして、4年間の猛練習の成果であることを考慮すれば、月あたりの報奨金は2万833円に過ぎない。