2016年のリオ大会で女子フェンシング(サーブル)銅メダルを獲得したアメリカのモニカ・アクサミット元選手(34)は、次の2021年東京大会に向けてトレーニングをしている期間中、GoFundMeで支援の受付を開始した。

彼女は米オリンピック委員会から月額300ドル(約4万5000円)のささやかな支給金を受け取っていたが、トレーニング費用は嵩み、累計2万ドル(約300万円)を超えるまでになっていた。オリンピックレベルのトレーニングに必要な時間を考えると、アルバイトをしている余裕はとてもなかったという。

英BBCが2016年に報じたところによると、アメリカのオリンピック選手は連邦政府からの直接的な支援を受けておらず、個人の自己負担費用は年間1万2000ドルから12万ドル(約180万~1800万円)に達することもある。

レース中のマラソンランナーたち
写真=iStock.com/tibor5
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経済苦や引退後の不安を抱え、選手たちはパリの舞台で闘っている

浮き沈みの激しさも課題だ。

オーストラリアの男子競泳のマシュー・アブード元選手(38)は、2012年のロンドン五輪の予選で0.02秒の僅差で敗れ、政府からの資金援助が打ち切られた。BBCによるとその後は、オーストラリアの銀行でアナリストとして働きながら、リオ五輪に向けてトレーニングを続けたという。

だが、このように望んだ職に就ける例はむしろ希だ。テレグラフ紙は、「オリンピック選手は、その種目では超一流かもしれない」と称えつつ、「20代後半から30代前半で引退する頃には、同年代の人たちとは異なり、転職に有利なスキルを職場で10年かけて身につけているわけではない」と指摘する。その結果、スポーツ以外のフィールドでは大きな不利が働く。

女子ショートトラック・スピードスケートの元選手で、2021年に引退したエリス・クリスティーさんは、同紙に対し、引退後の苦境を語る。「私は、(用意された)システムの下でメダルを獲得した人間ですから、全く何も持っておらず、ただ人生というものを理解するために独り取り残されたのです」

彼女は住む家を失い、3つの仕事を掛け持ちし、塞ぎ込む日々が続く中、経済的にも心理的にも支えとなったのがOnlyFansだった。収入源として生活を支えたほか、ファンとの交流に心を癒やされたという。「自発的で爽快な独占コンテンツを共有します」と言う彼女は、露骨なコンテンツは公開していない。

パリ五輪に集うオリンピック選手たちは、数年後の自身の生活も見通せない不安のなか、ありったけの力と技をフィールドにぶつける。経済事情などみじんも感じさせることなく、響き渡る歓声に応えようと、全身全霊を傾けたプレーが今日も繰り広げられる。

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