これから伸びるビジネスとはどのようなものか。実業家の堀江貴文さんは「かつてインターネットの民主化の波に乗って多くのITビジネスが生まれた。それと同じように、民主化が進みつつある宇宙には今、新しいビジネスが生まれる可能性が満ちあふれている」という――。

※本稿は、堀江貴文『ホリエモンのニッポン改造論』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

小型ロケット「MOMO」6号機の打ち上げが成功し、記念撮影に応じる「インターステラテクノロジズ」の稲川貴大社長(中央)と創業者の堀江貴文氏(右)ら=2021年7月31日夜、北海道大樹町
写真=共同通信社
小型ロケット「MOMO」6号機の打ち上げが成功し、記念撮影に応じる「インターステラテクノロジズ」の稲川貴大社長(中央)と創業者の堀江貴文氏(右)ら=2021年7月31日夜、北海道大樹町

日本発「グローバル規模のドコモ」ができる?

宇宙ビジネスは5億、10億の世界ではない。50億、100億の世界だ。もし私が100億円持っていたら、迷わず全張りする。それくらいの資金力をもつ企業はあるだろうに、まだ、その規模の資金提供の声はかかっていない。

さらなる追い風を吹かすことができれば、私は、衛星コンステレーション(※)で「グローバル規模のNTTドコモ」ができるかもしれないと考えている。グローバル規模の衛星コンステレーションのビジネスは、10倍以上の規模になると予感しているのだ。

※編集部註=地球低軌道(LEO=low Earth orbit)と呼ばれる地球から数百キロの距離に小さな人工衛星を大量に並べることで、高頻度で詳細に衛星から地球を観測する手法。

ロケットを製造して打ち上げるのは技術的にハードルが高い。

地球の質量は大きく、重力は強い。その重力に逆らって、大気が濃いところから薄いところまで超強力な出力を使って超高速で飛ばし、地球上の軌道に乗せ、水平飛行させる。もう一度言うが、ロケットは作るにも飛ばすにも、とてつもない技術力を要するのだ。

したがって、ロケットの「製造」「打ち上げ」「衛星システム」を垂直統合できる企業は、そうそう生まれないだろう。言い方を変えれば、もしそれを実現する会社が現れたら、その1社が大変な競争力を持つことになるのだ。

【図表1】ロケット産業で意識すべき3つのビジネスの軸
出所=『ホリエモンのニッポン改造論』(SBクリエイティブ)

となると、将来的には、ロケット産業にも独占禁止法のような規制法が設けられ、自社のシステムをリーズナブルな価格で開放せよということになるかもしれない。

かつて数社の独占状態だった通信キャリアが、ある程度の値段で新規参入組に基地局ネットワークを貸し出さなくてはいけなくなったのと同じように、だ。

「ロケットを作って飛ばせる」ことの価値

しかし、もしそうなったとしても、すべてを外部に対して割り当てよということには、さすがにならないだろう。自社のシステムがあったほうが、有利であることは間違いない。

また、私の頭には、衛星メーカーよりもロケット製造企業に圧倒的優位性があるという考えもある。衛星があってもロケットがなければ飛ばせない。そしてロケットの開発には莫大な時間的・金銭的コストがかかる。

したがって、力関係的にロケット製造会社のほうが強くなることは自明だ。宇宙ビジネスのなかで「ロケットを作って飛ばせる」ということには、それだけの競争優位性があるのだ。しかも、仮に将来的に規制がかかるとしても、それまでは打ち上げ放題だ。

将来的には、我がISTのような会社が、衛星メーカーを買収し、宇宙事業の総合企業となっていくかもしれない。

ISTをロケットの製造、打ち上げ、そして衛星システムの3本柱でやっていこうというのは、こうした考えからなのである。かつて私はインターネットの民主化の波に乗ってITビジネスで成功した。今度は宇宙の民主化の波を受け、ロケットと衛星で巨大なビジネスチャンスをつかもうとしているのだ。