「転勤は嫌だが、他の条件がよければ問題ない」

転勤嫌いは就活生に限らない。中途入社意向のある社会人調査でも「転勤がある会社は受けない」と回答した割合は24.9%、「転勤がある会社にはできれば入社したくない」が24.8%。計49.7%が応募・入社を回避したいと答えている。「転勤は嫌だが、他の条件がよければ問題ない」を含めると同じく80%を超えている。

求職者だけではない。前出の食品関連会社の人事担当者が言うように在職者も転勤拒否や離職まで考えている人が少なくない。

転勤がある企業の総合職の社員に転勤の受諾意向を聞いたところ、18.2%が「どのような条件であっても転勤は受け入れない」と回答し、63.4%が「転勤の条件しだいで受け入れる」と答えている。

また、不本意な転勤による離職意向では、37.7%が「不本意な転勤を受け入れるぐらいなら会社を辞める」と答えている。

こうした傾向は他の調査でも同じだ。

エン・ジャパンの「『転勤』に関する意識調査(2024)」(2024年5月7日)によると、転勤の辞令が出た場合、退職を考えるきっかけになるかという質問に、「なる」と回答した20代は43%、「ややなる」が25%。この傾向は30代、40代以上でも変わらない。実際に転勤の辞令を受けたことで退職した人が31%に上っている。

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転勤を嫌う理由としては、新しい土地での適応が大変だという理由や、共働きであることや進学期の子どもなど子育て中であること、親の介護などが多い。

しかし、それでも昔は本人の意向に関係なく、会社の命令で転勤せざるを得なかったが、今は大きく変化している。従来型の転勤のやり方では人材の確保や定着に重大な支障を来たすことになり、企業の危機感も強くなっている。

前出のサービス業の人事課長は「会社の転勤の方針に対する若年層の転勤に対する抵抗感が高まっている。いつまでも転勤の仕組みを堅持するのは難しく、会社も人材流出を抑えるための方針転換が求められている」と危機感を露わにする。