「年収1000万円」の会社員は幸せなのだろうか。数多くの大企業ミドルと日々接している前川孝雄氏は、「人生の後半戦では収入のプライオリティを下げ、『やりたいこと』や『家族との幸せ』を優先したほうがいい」という。なぜなのか――。
※本稿は、前川孝雄『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
高収入に伴うシビアな要求
今の時代に年収1000万円以上稼いでいるサラリーマンというのは、その多くが激務です。厳しいプレッシャーと長時間労働の中で、肉体的にも精神的にも疲弊し切っている人が非常に多いのです。
働き方改革で日本人の労働時間は減ってきていると言われますが、その実態は非正規雇用の人たちや部下の立場の一般社員の労働時間の減少が大きく、ミドル世代、特に管理職層の労働時間はそれほど減っていません。裁量労働制の人もおり、高収入に見合う結果をシビアに求められるわけですから、それも必然でしょう。
激務の末、体を壊す人や精神的に病んでしまう人も少なくありません。彼らの労働環境を目の当たりにすれば、単純に年収1000万円超をうらやましいとは思えなくなるはずです。
また、今、大企業でそれだけの年収を得ている層には、部長職など幹部管理職以上のポジションを得るまでに、辞令一つによる転勤を繰り返し、長時間労働に耐え、幸いにも心身を壊すことなく、我慢に我慢を重ねてきた人が多いはずです。
仕事人間、会社人間と揶揄されることも多い、こうした日本的サラリーマンの働き方は、多くの場合、家庭生活を犠牲にして成り立ってきました。子育てはすべて妻に任せっきりで、子どもが育ち盛りの時期に数年にわたって単身赴任を経験した人もいるでしょう。
その結果、会社での成功は手にできても、家庭は仮面夫婦、子どもとの意思疎通は皆無で引きこもり状態など、家庭での幸せはうまく育むことができなかったという人も決して少なくありません。