「会議設営」だけで寝泊まりするケースも

3つ目に、少なくとも数十年間にわたって職員の手を煩わせ、業務改善を妨げてきた雑事が依然として、生産性向上の大きな妨げになっている。

例えば、審議会等の会場設営の場合、会議室の机を配置したり、資料を並べる業務だけで多大な時間をとられることは今も昔も変わらない。資料の並べ方などに口うるさい上司がいる場合、こういう雑務の負担はさらに重くなる。資料は右上ホチキス止め、パワポ資料の細かな間違いで青筋を立てるなど、過剰品質を求める上司に当たると、会議が開催されるというだけで役所に寝泊まりするケースさえある。驚くべきは、筆者が入省した1990年と状況がまったく変わっていないということだ。当時も、偉い先生が並ぶ審議会を開催する場合、席順からお茶出し、資料配付まで、雑務に神経をすり減らしたものだが、これだけブラックぶりが批判される昨今でも、仕事のやり方が変わっていないのだ。

また、コールセンター改革では、厚労省への外部電話は1カ月当たり10万件を超え、苦情電話を含む電話に1日平均30分以上応答している若手職員は47%という事実が取り上げられている。このように電話対応が長時間労働の原因の一つになっていると指摘した上で、コールセンターの大幅増員などで対応することを提言している。これも相当昔からの課題である。

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苦情電話と質問電話が無制限にかかってくる

不可思議なことだが、霞が関は物静かで沈思黙考している職場だという印象があるが、本省には一般国民からの質問・苦情電話が無制限にかかってくる。国民の声に応えるのが義務だろう、そんな綺麗事の正論はここでは不要だ。国民生活を左右するかもしれない考え事に没頭すべき労働をしている人間に苦情電話や素朴な質問電話が無制限にかかってくるって……合理的に考えて、常軌を逸している。どんな人間でも思考が寸断されてしまうからだ。

それだけではない。アナログが猛威をふるう霞が関・永田町の世界では、影響力のある政治家などが突然電話をかけてくる。しかも、自分のことは当然知っているだろうと言わんばかりの傲慢な態度か、秘書が電話口に出たあと恭しく政治家本人に代わるといった仰々しいものがきわめて多い。このような電話での応答に相当のエネルギーをとられるため、費やした時間以上に、その後の仕事の生産性に大きな影響を与えていると考えられる。

4つ目は従来から問題となってきた国会対応に関わるものである。ここでは、答弁資料審査の効率化、オンライン議員レクの実証実験の実施、国会業務効率化について国会に対する申入れ、(国会質問に関連して)議員別の質問通告時間・空振り答弁数の分析・公表について言及されているが、一向に進む気配はない。