※本稿は、和田秀樹『コロナの副作用!』(ビジネス社)の一部を再編集したものです。
開業医を重視し、勤務医を軽視する
日本医師会は、開業医と勤務医がおよそ半数ずついる組織なのですが、開業医の意見が強く、開業医の利益を守ることには積極的ですが、勤務医や勤務医が勤める民間病院に関しては「我関せず」の態度をとることがもっぱらです。
民間病院の協会としては、公益社団法人全日本病院協会がありますが、残念ながらあまり力がありません。それもあって、民間病院の多くが疲弊しています。
日本の医療において、私が最もいびつだと思うのが、開業医と勤務医の収入格差です。開業医の収入は、民間病院の勤務医の2〜3倍です。このことも、日本医師会が開業医のためには積極的に活動するのに、勤務医のためにはあまり活動しないことと無関係ではないでしょう。
ちなみに、外来診療中心の開業医と、病床のある民間病院の勤務医との間に、2〜3倍もの収入格差がある国は、海外のどこを探しても日本以外にありません。
アメリカでは病院に1泊入院すると最低でも約2000ドルとられます。単純に1ドル100円換算で約20万円です。これに対して、日本では、特別な部屋や高度治療を必要とする入院を除けば、1万円台から数万円で安く抑えられています。
外来収入より、入院収入が多い病院ほど、儲からない仕組みになっており、当然、そこに勤める勤務医の収入も多くはありません。
開業医は、外来診療に特化しているケースが多く、病床があっても数床で、こちらのほうが儲かる仕組みになっています。
これは、日本医師会が開業医のために活動してきた結果でもあり、診療報酬が改定されるたびに、民間病院は割が悪くなっているのに、開業医は既得権益が維持され続けてきました。この「病院診療は割が悪くて儲からず、外来診療は割が良くて儲かる」という、日本の医療制度も非常に大きな問題です。