なぜ民間病院の多くが疲弊しているのか?

東京は、土地代や建物代も高く、人件費も高いため、多くの病院が赤字です。東京には大きな病院がたくさんありますが、純粋に民間の大病院はあまりありません。

他方、地方は違います。徳洲会グループが選挙のたびに何十億円も用意できたのは、それだけ儲かっていたからです。

ではなぜ、東京では病院が儲からず、地方では病院が儲かるのか。東京でも地方でも診療報酬の点数が同じだからです。収入が同じなら、経費が安いほうが儲かる、という単純な話です。

また、病院に対しては、病床数に対して必要な医者や看護師の人数に決まりがあります。これを守るためには、医者や看護師の人員削減や効率化を行うことができず、逆に医者や看護師の人員を確保できなければ、病床数を減らすしかありません。

こうしたこともあって、慢性的に医者不足に陥っている病院の倒産や統廃合が進みました。

日本医師会はこれに対しては何も言いません。日本医師会にとって民間病院の問題は自分たちの管轄外ということなのでしょう。

現在、高齢者の入院が増えていますが、高齢者は慢性病での入院が多いという特徴があります。一般的には、他の入院患者よりも、慢性病の高齢入院患者のほうが手間がかからないため、病気の急変には注意が必要ですが、ひとりの医者が高齢入院患者を多数診ることが可能です。

しかし、現在は病床数に対して必要な医者の数が決まっているため、このようなひとりの医者が規定よりも多くの高齢入院患者を診ることは許されていません。厚生労働省が、こうした規制を緩和すれば、病院はより多くの高齢患者の受け入れが容易になります。

和田秀樹『コロナの副作用!』(ビジネス社)
和田秀樹『コロナの副作用!』(ビジネス社)

もちろん療養型病床という治療をあまり行わないで済む代わりに医師や看護師も少ない病院という特例はありますが、診療報酬は大幅に低めに設定されています。

このように一般病院に規制緩和を厚生労働省が行わないのは、短期入院型のアメリカ型の医療を目指しているからです。高齢者が増えているのに、高齢者向けの医療の仕組みを変えることなく済ませているから、民間病院がどんどん疲弊しているのです。

全日本病院協会に力があれば、こうした現状を私たちに訴え、現状を変える活動を行うことができるのでしょうが、残念ながら、私たちに対しても、役所に対しても、もの申す力が弱いため民間病院は疲弊する一方です。